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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 6 (2026.1~)   作者: 四季


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過ぎ去ったことは過ぎ去ったこと、わたしはもう誰にも何にも縛られないわ。

 正直なところ、今もまだよく分からないわ。


 どうして婚約破棄なんてしたのか。

 どうして一方的にすべてを終わらせたのか。


 ……けれど、すべてはもう過ぎ去ったこと。


 今さらわたしが何か言ったところで何も変わらないことは分かっているもの、だからあれこれ意見を言ったり文句を言ったりするつもりはないの。


 でも、あの時は、本当に悲しかった。

 だってあなたのこと大切に思ってきたから。

 愛しい人と、いつまでも、共に歩んでゆく人生を信じていたのに――思えば思うほどに胸が締め付けられるようで、言葉を発することすら難しく感じてしまう。


 けれどそれすらも糧として……。


 わたしはもう迷わない。

 そして振り返らない。

 過ぎたことに縛られ続けることに意味などありはしないから、ただ前だけを見据えて、真っ直ぐに進んでゆくの。


 ……それにね、わたし、今はとても幸せなの。


 大切にしてくれる人に巡り会えたから。そして、その人と結ばれることができたから。せっかく良い縁に恵まれたのだから、それを大切にしながら生きていくのが最善というものでしょう。根拠なんてなくても分かるわ。何を選び進むべきか、くらいは。何を一番尊いものとして見つめるべきなのか、ということくらいは。


 だから大切な人の手は絶対に離さない。


 そして幸せであり続ける。

 もう二度と悲しみへは向かわない。


 きっとこの先も色々なことがあるでしょう。

 愛しい人と共に在っても、それでもなお、心が折れかけるような瞬間だって訪れるかもしれない。

 けれど、それすらも乗り越えてみせる。

 真っ直ぐな愛。揺らぐことのない想い。手を取り合う覚悟。そういったものが確かに存在するなら、わたしたちは共に歩き続けることができるはず。

 二人、共に、幸せな未来へ行くための努力。それは二人が互いにすべきことよね。だから、わたしも。できる限りのことをして、努力を重ねることを楽しみながら、この穏やかで平和な居場所を護って進む。


 春には数多の生命の芽生えを感じ、夏には日射しの力強さに圧倒されつつもその瞬間にしかないものを味わい、秋には実りに感謝しつつ季節が緩やかに次へ向かう様に触れ、冬には空気の冷たさに震えながらも誰かと過ごす時間の温かさに生きることという希望を見る。

 そんな風にして、一歩一歩前へ進んでゆけたなら……きっと永く幸せでいられる、そう信じて疑わないわ。


 失われたものを求めるのではなく。

 過ぎ去った過去に縋るのでもなく。

 今も、これからも、既に手に入れられているものを包み込むように抱き締め大切に想っていられる、そんなわたしでいたいの。


 ……だからね、さよなら。


 あなたの影はいつだってここにあった。

 でももうそれは要らないもの。

 すべては幸福への糧となるだけ、それ以上のものなどありはしない。


 そうよ、今のわたしは無敵だわ。


 わたしの目の前に立ち塞がることができる者なんていない。邪魔者なんて希望の光ですべて消してしまう。なんだってできる、そう思えるくらい、今のわたしには迷いがないの。


 見上げた空は青く澄んで、心の淀みなんて一瞬にして消してしまう――わたしもいつか誰かにとってのそんな存在になりたい。


 希望を授ける者。

 希望を生み出す者。

 そういう人間になれたなら面白いんじゃないか、って、思いもするわ。



◆終わり◆

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