優しい嘘なんて言ってほしくなかったわ。~さよならを告げるとき~
優しい嘘なんて言ってほしくなかったわ。
今もそう思っている。
あなたは都合のいいことを言っていればいいと考えていたのかもしれないけれど、そんな雑な言葉を並べても意味なんてないの。
甘い言葉を吐いておけばわたしが言いなりになると思った? ありがとう、とか、嬉しい、とか、そんなことを言って呑気にニコニコ笑っていると思ったのかしら。だとしたらあなたは……わたしのことなんて、何一つ理解できていないわね。
わたしの心を掴むために必要なものを、あなたはまったくもって理解していない――だからあんな結末を迎えたのでしょう。
まぁ、確かに、世の中にはそういう人もいるかもしれないわ。
甘い言葉を囁かれれば浮かれて。
疑いなど欠片ほども持たずに嬉しい嬉しいと話す。
でも、わたしがそういう人間ではないということは、あなただって知っていたはずでしょう。
……それでもわたしがそんなことで喜ぶと思ったのかしら?
ならば、あなたの瞳に映るわたしはわたしではないわ。それは、あなたが見ている幻想のようなもの。所詮それだけの存在、幻に限りなく近いもの。あなたが見ているもの、あなたが信じているもの、そのすべてがわたしではない何かなの。わたしの姿をしていてもわたしではない、そういう存在ね。
都合のいいことを言って。
勝手に物事を進めようとして。
そんなあなたでわたしを思い通りにできると本気で考えていたのなら……少しばかり愚かね、と、言わざるを得ないわ。
優しい嘘なんて言ってほしくなかったわ。
今もそう思っている。
あなたは甘い言葉ばかり並べていればいいと考えていたのかもしれないけれど、そんなものを並べても意味なんてないの。
……だから、さよなら。
◆終わり◆




