魅力の欠片もない、ですか……そんなことを言ってくるなんて、失礼な人ですね。
「君のような魅力の欠片もない女性と生涯を共にするなど不可能だ。よって、婚約は破棄とする」
婚約者アベンダンはある日突然そんなことを言い放ってきた。
「俺はもっと魅力的な女性と結婚する。よって、君とはここで終わりとする」
「また、急ですね……」
「うるさい!! まぁいい。もうここでおしまいなのだから」
「そうですか……」
こうして私たち二人の関係は呆気なく終わりを迎えたのだった。
これまで築いてきたものなんて何の意味もなかった。共に過ごした時間、未来を信じてきた日々、それらすべてが塵と同じくらい軽いものとして散ってしまった。
◆
突然婚約破棄された日から一年、アベンダンはこの世を去った。
その日、彼は街で通行人の女性に惚れた。
そして追いかけたのだが。
あまりにも執拗に追いかけてしまったために通報されてしまい、牢屋送りとなったそうだ。
で、その後、牢屋内にて他の人と喧嘩になり、負傷して命を落としたらしい。
◆
幾つ季節が流れただろう。
もう分からない。
数えてもいない。
ただ、確かなことは、流れていった季節は一つや二つではないということ。
そして今、私は、穏やかな日常の中にある。
「おはよう。コーヒー淹れたよ。良かったら一緒に飲まない? 二人分用意してるから」
「ありがとう」
「ミルク入れる?」
「あなたは?」
「入れるよ」
「じゃあ私も」
「はーい」
柔らかな性格の夫との日々、そこには平穏しかない。
だからこそ、この居場所を護りながら生きていきたいと思っている。
◆終わり◆




