貴方のことを愛していた、それは確かなことでした。〜悲しみは消えず〜
冷たい雨を浴びる。
悲しみは消えない。
風が吹き、木々を揺らし、それでもこの胸を満たしているのは黒いもの……そこに救いはない。
貴方のことを愛していた。
それは確かなことだった。
婚約という契約を交わした私たちには未来があるものと思い込んでいて。だから未来について不安を抱くことなどなかった。私たちはどこまでも共に行けるものだと、それが当たり前なのだと、そう思っていたのだ。
……けれどもすべては終わってしまった。
貴方は私を愛してはいなかった。
形だけの婚約だった。
平然とそう述べる貴方の瞳は冬の夜の海のように冷たくて。
想いというものの儚いこと。
愛というものの脆いこと。
貴方は私を見つめはしない。
私が貴方を見つめていても。
もう、私たちには、同じ未来を見つめることはできない……。
どうしてこんな風になってしまったのだろう。
考えても意味がない、分かってはいる。
運命の女神の決定に抗うことなど、ちっぽけな人間には不可能なのだから。
ただ、それでも、どうしても考えてしまうのだ。
無駄なことだとしても。
意味などないとしても。
冷たい雨を浴びる。
悲しみは消えない。
風が吹き、木々を揺らし、それでもこの胸を満たしているのは黒いもの……そこに救いはない。
◆終わり◆




