過去、婚約者に裏切られましたが、今は年上夫に優しくしてもらいながら幸せに暮らしています。
「アリサくん、今日は誕生日だったね」
「は、はい」
私アリサは十ほど年上の男性サディバンと結婚している。
彼は落ち着いた人だ。しかもそれでいて温かい。どんな時も冷静で、しかしながら冷ややかというわけではなくて。いつも柔らかな温かさを持った接し方をしてくれるので、人生のパートナーとするにはもってこいな人物であると思う。
「これを」
「花束……!」
「贈りたい」
「こんな素敵なものをいただいてしまって、本当に、良いのですか?」
「もちろんだよ」
「ありがとうございます……! とても……とても、嬉しいです」
過去、私には、サディバンではない婚約者がいた。だが彼は私を裏切った。婚約期間中に私の学園時代の後輩に手を出し、その悪事が明るみに出そうになると一方的に私を切り捨てたのだ。
……もっとも、彼らは逃げられなかったのだが。
というのも、その後ある同性の友人が協力してくれて彼らの罪を暴いてくれたのだ。
正義感が強く知性に満ちた友人には感謝している。
彼女がいなければ彼らの罪はなかったことになるところだったから。
元婚約者の彼とその浮気相手は、自身の行いを皆に知られてしまい、社会的に終了した。
聞いた話によれば、だが。
元婚約者の彼は、仕事場の偉い人に罪を知られてしまい、職場から追放されてしまったそうだ。 彼の勤めていた会社の上層部は基本そういった汚い行いを嫌う体質だったそう。それゆえ彼のような人間を受け入れられはしなかったようで。そういったこともあり、切り落とすという判断になったようである。
一方、彼と浮気していた私の後輩でもある女性はというと、その頃ちょうど持ち上がっていた結婚話が白紙に戻ってしまったそうだ。
女性としてはその相手のことは好きではなかったようだが、かなり条件の良い相手だったらしく、白紙に戻ったことは彼女の親にとってはかなり衝撃的な出来事であったようで。女性の母親はその一件によって心を病み、その夫である女性の父親もそれ以降体調を崩しがちになってしまったそうだ。
また、そんなある日女性は事故に遭い、可愛らしい顔面を失った。
その後二人は破局したらしい。
「花束、気に入ってもらえて良かったよ」
「いつもすみません、優しくしていただいてばかりで」
「いいんだ。わたしが勝手にしていることだからね、気にすることはないよ」
「ありがとうございます」
「今夜は特別なメニューを用意しているから、夕食も楽しみにしていてくれると嬉しいよ」
サディバンは頬を緩める。
彼のそんな表情が私は好きだ。
どこか哀愁をまとっていて、けれども優しげでもあって。そんな面持ちは彼ならではのもの。
「そういえば、ハーブティーはお好きかな?」
「はい」
「実は、とても美味しいものを見つけたのだけれど……この後どうだろうか」
「飲まないか、というお誘いですか?」
「そうだね。よければぜひ、と。アリサくんが嫌でなければ、共に、ハーブティーを楽しみたい」
「ぜひお願いします」
「良かった! では、共に楽しもうじゃないか」
今日に至るまでいろんなことがあった。良いことも、悪いことも。でも、それらがあったからこそ、サディバンに出会えた。それらがあって今がある、ということなのだ。ならばどんな出来事も単なる悲劇ではなかったと言えるだろう。
過去の悲しみには別れを告げて、ここからはサディバンと共に幸せの中で生きていく。
「ところでアリサくんはどういったハーブティーがお好きなのかな?」
「そうですね……柔らかなタッチのものが好きです。あまり酸っぱくないものが飲みやすくて」
「同じく」
「そうですか! 好みが合いそうですね」
「わたしもちょうどそう思っていたところだよ。ハーブティーの好みが合う夫婦というのは良いものだね」
◆終わり◆




