ある昼下がり、街で……。~彼とはもう終わったのです、やり直す気はありません~
ある昼下がり、街へ出掛けていたところ、婚約者である彼ルイーヴェンが知らない女性といちゃついている場面を目撃してしまった。
まさかの展開に戸惑いつつも「こんにちは、ルイーヴェン」と声をかけてみると、彼は一気に青ざめる。
「ど……どうして、お前が、ここに」
「どうして、って、ただの買い物よ」
「そ、そうか……」
「で?」
「……何だよ」
「そちらの女性とは一体どういう関係なのかしら?」
するとルイーヴェンは急に目じりを引き上げて「う、うるさいな! いちいち! ただちょっと遊んでただけだろ!」と攻撃的に発してくる。
あまりにもみっともない反応に呆れていると、彼はさらに「何だよその目! 生意気だな、生意気の極みみたいな目つきしやがって! ムカつくんだよ、うっぜえ!」などと乱暴な言葉を投げつけてきた。
「……いずれにせよ、私はもう貴方とはやっていけないわ」
あくまで冷静に。
伝えるべきことだけを伝える。
無意味な喧嘩などする必要はない。
「貴方との婚約は破棄とします」
「は、はあああ!?」
「他の女性といちゃつく方と生涯を共にする気はありませんので。どうぞ、そちらの女性と仲良くしていってください」
◆
あの後、真実を知った女性に振られたルイーヴェンは私のところへやって来て「もうあの人とは関わってないから、やり直してほしい」と言ってきたけれど、はっきり断った。
一度ああいうことをした人だ、もう信用はできない。
今、浮気しているかどうか。それだけが問題ではないのだ。一度やらかした人は恐らくまたやらかす。よほど反省して気をつけるようになったなら話は別だが。そんな良い事例というのは少数で。大抵はまた同じような過ちを繰り返すもの。
だから彼とやり直す気は一切なかった。
それから少しして、ルイーヴェンは自宅で両親と喧嘩になった際に母親を殴ってしまい、逮捕された――彼は社会的に終わった。
◆
ルイーヴェンとの婚約を破棄すると決めた日からちょうど二年となった昨日、私は、結婚式を挙げ、愛する人と結ばれた。
過去のことなどどうでもいい。
今を生きているのだから。
記憶は記憶、ただそれだけのものとして、忘れ去りはしないけれどそれに縛られ続けるつもりもない。
幸運にも想い合える人と巡り会えたのだから、その縁を大切に、これから永い時を彼と共に歩んでいこうと思っている。
◆終わり◆




