あんな小さなことで婚約破棄されるとは思いませんでした……。~この道を選んで良かったです~
「お前ってさ、にんじん好きなんだって?」
「え……え、ええ。まぁ……そうね」
婚約者である彼アンデスから話を振られたので深く考えずに答えたのだけれど。
「あ、そう。じゃあ決めた。婚約は破棄、な」
突如関係を叩き壊されてしまった。
「にんじん好きの女とか無理だからさ」
「ええっ……」
「俺はもっと価値観の合う人と結婚したいんだ」
にんじんが好きか嫌いか。
そんなことで婚約破棄されるとは思わなかった。
けれども婚約破棄を告げられてしまったことは事実だ。
あの時「嫌い」と言っていれば、婚約破棄されなかったのだろうか……?
真相は分からない。
ただ、彼が小さなことで婚約破棄してくる人だったのなら、いつかどこかで婚約破棄されてしまっていたことだろう。にんじん一つで壊れる関係であったなら、どのみちにんじん以外の何かによって壊れたに違いない。
彼と行く道の先に明るい未来はなかったのだろう、きっと。
◆
あれから三年、私は料理研究家として忙しい日々の中にある。
母にすすめられて入った料理学校にて先生から高い評価を受けた私は、気づけば料理愛に目覚めていて、その道を人生の道とすることを選んだ。
毎日の修行は大変だったけれど、好きなことだから頑張れた。
そして近頃ようやく知名度が上がってきた。
一つ一つの小さなこと地味なことに真剣に取り組んできたからこそ、こうして華やかな場所へたどり着けたのだろう。
これからも、基礎を大切に、一歩ずつ前へ進んでゆけたらと思う。
ちなみにアンデスはというと……あの婚約破棄の数日後、実家の裏庭で滅多に見かけない種類の獣に襲われ命を落としてしまったそうだ。
◆終わり◆




