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あの時、彼は、私を切り捨てた。~小さな幸せがたくさんある日々は良いものです~
あの時、彼は、私を切り捨てた。
冷ややかな目をして。
低い声で終わりを告げる。
『君のような魅力的でない女性と結婚して生涯を終えるほど僕は暇じゃないんだ』
……あの時かけられた言葉は今も忘れていない。
だがすべては過ぎ去ったことだ。終わったことは変えられない、けれども、終わったことは終わったこととして過去というごみ捨て場に捨てていくことはできる。忘れてしまうことはできずとも、捨てていくこと、そこへ置いていくことならできるのだ。
だから私はそれを選んだ。
そうして、次の道へ進み、良き人と巡り会い結婚することができた。
今は穏やかな日々の中に在る。
優しい夫と同じ家で過ごし、温かな人に囲まれ、美味しいお茶を飲む余裕だってある。
小さな幸せに満ちた日常、それは、派手ではなくても幸福そのもの。
大金持ちではないけれどある程度暮らしにおける余裕はあって「毎日が充実している」と迷いなく言える――そんな日々が私は好きだ。
ちなみに、かつて私を切り捨てた彼はというと、あの後友人に誘われて怪しい事業に手を染めてしまい逮捕されたらしい。
◆終わり◆




