婚約破棄してきた婚約者も、彼と一緒になろうとした女性も、あっさりこの世を去りました。
「お前との婚約は破棄とする!」
婚約者ルチオールに宣言されたのは、ある晩餐会でのことだった。
「え……」
「そして俺は幸せになる! 彼女と、な!」
「マリア!?」
「驚いたようだな。ああそうだ。俺が愛しているのはお前の妹さんだ」
どうやらルチオールは私の妹であるマリアと裏で親しくなっていたようで。
「お前はもう要らん! ではな。……さようなら」
いつの間にか要らないものとなってしまっていた私は、あっさりと切り捨てられてしまったのだった。
◆
あれから少しして彼らはこの世を去った。
婚約者だったルチオールは、ある時、かっこつけてマリアのために猪を狩ろうとしたそうだ。しかし当然経験がなかったのでまともに対応できなくて。猪を狩るどころか逆に狩られてしまうくらいの勢いで。猪の激しい突進攻撃によってルチオールは命を失うこととなってしまったそうだ。
そしてマリアもそれに巻き込まれた。
ルチオールを仕留めた後、猪は、唯一近くにいた人間であったマリアを狙った。怒りのあまり興奮状態になっていた猪はマリアにも襲いかかったらしく、それによってマリアもまた命を落とすこととなってしまったそうだ。
彼らの最期は非常に呆気ないものだった。
◆
あれから一年半、私はルチオールではない男性と結婚し、幸せになることができた。
未来のことなんて分からない。
けれど現在だけは分かる。
それは確かなもの。
今の私が見ている景色は、言葉にできないくらいの幸福感に満ちたものだ。
だから歩いてゆける。
◆終わり◆




