雪が溶ける頃、婚約破棄を告げられました……。~愛おしいこの場所を護り続けていきたいです~
街を白く染めていた雪が溶け始めたちょうどその頃のことだった。
「わりぃがあんたとの婚約は破棄することにした」
婚約者である彼ラッツィンに呼び出され、彼の家へ行ったところ、そんなことを告げられてしまった。
「俺はさ、あんたと生きていく気はなかったんだ。最初っから。まぁ一応婚約しておいただけっていうか、それだけなんだよな」
「そうだったのですね……」
「あと、もっといい女との話がまとまりそーっていうのもあってさ。だからあんたとはここまでにする、そう決めたんだ」
ラッツィンは平然とそんなことを言い、その後あっさりと「話はこんだけ。じゃ、解散な。バイバイ」と続けた。
話はそこで終わってしまう。
幕は下りた。
結局何か言い返す間さえ与えられないままだった。
その後、間もなく、ラッツィンは別の女性と結婚した――が、幸せになることができなかったようだ。
結婚してすぐにちょっとしたきっかけから職場の女性と不倫してしまい。それが奥さんにばれてしまったために激怒され。結婚したばかりだというのに夫婦仲は最悪なものに。
そこからは喧嘩ばかりの毎日となってしまったらしく、一年も経たないうちに離婚することとなってしまったそうだ。
しかも、離婚の原因が自身の不倫だったということもあって、かなり高額な慰謝料を支払わされてしまったそうで。
離婚後の彼は、経済的にかなり苦しい生活をすることとなってしまったようである。
◆
あれから数年、私は今、二児の母として穏やかに暮らしている。
「おかあさーん! パンまだー?」
「もうちょっと待って」
「ぼく、お母さんのパン、早く食べたいよー」
「はいはい」
二人の子を育てる日々はかなり忙しい。
しかし嫌かといえばそうではなくて。
愛しい存在の成長を見守ることのできる毎日には価値を感じている。
少し慌ただしくても充実感に満ちている日々、それは、確かにこの胸を満たしてくれている。
思いやりのある夫と、可愛いなんて言葉を超越した存在である子どもたちと、過ごせる今は幸福感に満ちたもの。だから私はこの日々を手放さない。時の流れを止めることはできないけれど、大切なものを護ることはできるはず。
だから私はこれからもこの場所を護り続けていく。
◆終わり◆




