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12/23

12 : 聖女のローブと遺跡

さらに二週間が経ち、フローラが学園に入学してから一か月が過ぎようとしています。


この二週間は基本的には聖女クエストをこなしつつ、魔物討伐の毎日でした。


ゲームと違う点は聖女クエストの時間があまれば平原に行くことができたことです。


そのおかげででゲーム以上の安定度です。


他の攻略キャラや悪役令嬢との関係性には変化はありません。


それどころかフローラは前以上に他の人との会話を避けているように見えます。


レクスハルトだけでなく、デュランや、もちろんスフィア、バーラともです。


孤立していく聖女という感じが否めません。


ゲームであれば気にならない他の NPC(ノンプレイヤーキャラ) の視線も、彼ら彼女らが生きた人間となれば温度を持ち始めます。


しかし、すべてが敵意というわけではなく、むしろ好意的な人が多いのもまた事実です。


聖女クエストは学園内でも発生しているものがありますし、基本的には誰かの問題を解決するものですから、奉仕精神の溢れた素晴らしい聖女という噂も広がっています。


孤立は、どちらかといえば高嶺の花という方向に近い気がします。


フローラはというとあまり気にした様子も見せていません。


そして、いよいよ聖女のローブがある森に行く日になりました。


もちろん、聖女のローブ自体は平原先の森にありましたが、フローラの聖女レベルが低いために触れることはおろか見ることもできませんでした。


それも、昨日浄化の魔法が使えるようになったことで一定の聖女レベルに達したことが伺えます。


浄化の魔法は幽霊系の魔物など物理攻撃無効の敵への特効を持ちます。


フローラは私に使う気はないみたいですが、もし向けられたどうなるのか気になります。


まだ消えるわけにはいきませんので、試しに、なんてことは言いませんが。


『フローラ。準備はいいですね?』


私はリュックを背負ったフローラに問いかけます。


学園は土曜日と日曜日は休みのため、この休みを利用して森まで遠征に出ます。


それほど距離があるわけではないのですが、歩きのため片道三時間はかかります。


また、聖女のローブ以外も道中で拾えるアイテムは根こそぎ拾うつもりであるため、外泊の予定です。


「うん。行けるよ」


聖なるメイスを大道芸人のようにくるくると体に這わせるフローラの目は自信に溢れていました。


平原にいるプレイン・シープ以外の魔物も一通り倒した経験があるからでしょう。


『くれぐれも油断には気をつけてください』


「レーコ、心配しすぎ」


肩をすくめてフローラは笑います。


回復の魔法も軽い骨折くらいなら完治できるほどになっているため、最近のフローラはどこか慢心気味です。


序盤終わりにこの強さなら仕方がないのかもしれませんが、心配です。


寮母さんに外泊届を出した後、フローラは街から出ました。


庭と呼んでもよいくらいに慣れた平原をサクサクと進み、森の入り口へとたどり着きます。


森は生命力を感じさせる青々とした葉で覆われていました。


木々の背丈も十メートルはくだらないため、平原との落差でまるで禁足地のようです。


しかし、前世とは違い幽霊やお化けが出ても浄化の魔法があるフローラは強気に足を踏み入れます。


そもそも、幽霊は私がいるせいで恐怖しないというのがあるのでしょう。


常に半透明に白装束の女性が後ろにいれば、怖がるものも怖がれないはずです。


出てくる魔物は平原の中では強い方のアイサイト・ワームと同じか、それ以下です。


フローラは特に障害に当たることなく足を動かしています。


マップ自体は私の頭の中にあるため、迷うことすらありません。


杞憂だったのでしょうか。


チャートと同じ道をチャート以上に鍛えているのだから、心配しすぎだったのかもしれません。


「聖女のローブまでは、あとどれくらい?」


休憩中、フローラは私を見て聞きました。


『そうですね。このペースなら一時間もすればたどり着けると思います』


「そう。これなら日帰りでも良かった、かな」


聖女のローブを手に入れたときに、何かと戦闘になるみたいなことはありません。


森深くの遺跡にあるため、謎解きは必要ですが、私が答えを知っているので試練にもなりません。


だから、日帰りでも良かったと聞かれれば、そうかもしれないのですが、なぜか頷く気にはなれませんでした。


休憩を終え、さらに歩き出したフローラは一時間もかからずに遺跡にたどり着きました。


その空間は聖女うんぬんを抜きにしても荘厳な雰囲気が漂っています。


古びた壁に這うツタは、そのまま森の生命力と一体化しているように見えます。


その中央にぽっかりと開く入口が見えます。


ただ人を丸のみできそうな闇だけが外から見えるものです。


「ここ、だよね」


フローラは気圧されたように言いますが、それでも中に入る気勢は衰えていませんでした。


『はい。浄化魔法の聖なる光(トーチ)をつけてください』


聖なる光(トーチ)とは浄化魔法の最も初歩の魔法です。


淡い白の光を浮かばせるだけなのですが、この光に充てられた幽霊系の魔物へは物理攻撃が通るようになります。

そして、消費魔力は少ないため戦闘中は持続可能です。

聖なる護符があれば、レベル次第では魔力の回復量が上回るため永続しようすら可能となります。

今のフローラなら、遺跡にいる間使い通してもおつりが来ます。


フローラは聖なる光(トーチ)を唱えて、中へと足を踏み入れました。


温度が下がったのかフローラは身を震わせます。


階段を降りていくと、広間があり、そして壁が道を塞いでます。


ゲーム的に言えば、この壁は破壊不能オブジェクトなのですが、現実ならどうなのかとも思いましたが、普通に謎解きすれば入れるだけなので試す必要もありません。


壁には文字が刻まれています。


『初代聖女より、次代の聖女に向けて』


そんな文言で始まる文章は、簡素でわかりやすいものです。


要約すると、知力の無い人間は力の使い方を誤まりかねない。

だからこそ、ここで知力を試し、ぜひ突破してほしい。


という内容だ。


「それで、ここから中へはどう入るの?」


フローラは壁を触りながら入り口を探しています。


『もうじき、入れるようになるはずです』


この部屋の先へは浄化魔法を何かしら発動していれば入れるようになります。


聖なる光(トーチ)を使ってもらったのも、そのための時短テクニックです。

別に学園でならった光魔法でも明かりだけなら問題ありませんから。


しかし、どれだけ待っても道が開かれることはありませんでした。


『もう一度、聖なる光(トーチ)を使ってもらってもいいですか?』


頷いたフローラは息を吸って聖なる光(トーチ)と唱えました。


フローラの周りに漂う光が二つになり、部屋全体が一気に明るくなります。


「キレイ」


フローラが呟きました。


壁一面が浄化魔法に呼応するように紋様を浮かび上がらせたのです。


その線一本一本が生きているように雄弁に壁を駆けずり回ります。


そして、二尾に分かれた線が中心で一本に戻った時、ひと際強い光が周囲を覆いました。


気づくと私たちは次の部屋へと飛ばされていました。


しかし、どこかゲームとは違います。


フローラは周囲を見て、急にうろたえだしました。


「レーコ、どこにいるの?」


読んでいただきありがとうございます!

前作はおかげ様で毎日更新で完結まで走ることができました。

今作では毎日更新に加えて文章の推敲もしていきたいです。

楽しんでいただけると幸いです。

皆さまの応援が励みになりますので、

よろしければブクマや評価の方もお願いいたします。

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