第8話.リヒト団長
傭兵は用事を終えてルイスの部屋に戻る。
「……カッ………クァー……」
寝相が年寄りすぎるだろコイツ
「オラァっ起きろ!朝だぁ!」
宙に舞ったルイスは「ンァア!」と驚きながら
ダンッ!と両足で着地する。
「うぉぉ!?まじか!猫みてぇだな!」
バクッバクッと心臓が軋む。
「…!?なに、ごとだ!?」
「おはよう」
「最悪の目覚めだよ!」
「そろそろ向うぞ」と言われ準備をするルイス。
「一番大きいのはリュックか?俺が持つから貸せ」
「持ってくれるのは良いけど、鎧で破けない?」
「余裕、まぁ貸してみろって」
ルイスから渡されたリュックを両手で挟み込むとリュックの輪郭が白くなり始める、やがて透ける様に消え去る。
「はぇえぇ?なにそれ!なにそれ!」
「知らないだろぅ?知りたいかぁ?」
「教えて先生!」
………
「まぁこうしてだな……無理か」
長く難しい話はルイスに効果抜群だ!
「そもそも魔法式使えるのか?今まで一人で冒険してて魔法はどうやって使ってたんだ?」
「普通に過ごしてて魔法使わなくない?そもそも魔法式とか使えないし」
「魔法使ってないってのは通らんだろう」
「魔光ランタンは使ってるよ?」
「……魔法使ってるよ…な?」
「え?」
「いや、最初会った時に強めの封魔と呪詛返しの加護発動してたからずっと使える前提で話してるんだけど…馬鹿すぎて無理そうな感じだからな」
昨日のことを思い出す。
なんかヤバいモヤモヤ出てたけど、こいつは本当に俺のこと呪おうとしてたのか…
「馬鹿とはなんだ馬鹿とは!加護??なら多分ばあちゃんに掛けられたまじない?なら付いてるかもしれないけど」
何日も連続で持続する加護ってなんだよ…こえーよ
「そぅっすか…」
傭兵はこれ以上踏み込むのを止めた。
ルイスは再び冒険者協会へ向う。
「俺でも入れてくれそうなキャラバンってどんなだろう?」
「さては受付するの嫌だから入るつもりだな?」
「なぜわかった!」
「動機が不純なんだよな、自分で探せ」
ぐぬぬ、といった顔をしてルイスは聞き込みをする。
「キャラバン?実力で山分けになるから入るなら小規模の方が良いんじゃね」「俺が参加する所はちょっと君には早いかなぁ?」
聞くも話すもルイスを子供扱い。
「軽くあしらわれた…どこも初心者は要らないって感じだ…どうしよ」
苦戦するルイスに見かねて傭兵がひと言挟む。
「なんで冒険者に聞いてんだ、キャラバンの集まりに行ったら良いんじゃねぇか?」
「たしかに、そうかもだけどあそこ混むんだよなぁ」
面倒くさがりが発動しながらルイスは広場へ向う。
広場では多くのキャラバンで賑わう、動物に直接荷物を下げた連隊や馬車を引く隊商まで幅広い。
乗馬は嫌だなぁ、とか考えながらルイスは都合の良いキャラバンを探す。
「ルイス、あれはどうだ?」
「どれどれ?……なんか孤立してるけど?」
傭兵が示したキャラバンは荷馬車を持つキャラバンだったしかし荷馬車の後ろには荷車が繋がっている。
「あの荷馬車だと物運ぶのが仕事のキャラバンじゃないの?」
「良いと思うんだが…訳ありそうで」
「また面倒に突っ込ませようとしてない?」
そう言って他を探そうとしたらルイスの肩を引く赤髪の男が現れる。
「少年よ、あの荷車が気になるか」
「えっっと?いや?別に…」
「さぁさぁ!遠慮せずに!」
男は笑いながらルイスを抱え連行する。
「ちょっとなにするんだ!俺はバハラ行きのキャラバンに参加しようと思ってるんだ!」
「おぉ!良いじゃないか!俺の所に来いよ!」
ルイスは傭兵の方を見ると「頑張れ〜」と言うように手を振っていた。
(あいつ!)
「ちょっと待て、俺のってあんたそこのキャラバンの人!?」
「いかにも!俺は孤高のキャラバン団長、リヒト様だっ!光栄に思え?」
絶対こんな強引だから孤立してる!
荷馬車まで連れてくると。
「冒険者の参加者連れてきたぞー!」
団長と名乗る男がそう言うと荷馬車からゆっくりと「なんだなんだ」と若い男と女性が出てくる。
「団長…また強引に引っ張ってきたのか?しかも抱えてるし…」
「んん~?その子冒険者?初心者ちゃんじゃないの?」
「大丈夫だ!荷車のことジッ……っと見てたから才能はあるぞ…多分!」
ジタバタと暴れるルイス。
「だーかーらー!あんたらの場所だけ人居ないから目立ってたんだよ」
「あら?人が居ないとは思わないわ?単にリヒトが近寄る人を猛追してたら寄り付かなくなっただけで」
「原因わかってるじゃん!」
「なんで君は荷車を見てたんだ?」
そう若い男に聞かれるとルイスは大変困った。
「ぇぇと勘で…見てました」
「ほら見ろ、少年よ良い目をしているなっ!」
「団長…そろそろ降ろしたらどうだ?」
ようやく解放された。
「ずっと荷車って言ってるけど何が乗ってるんだよ」
「うちのキャラバンで参加者になるなら教えるぞ?」
「じゃあいいや」
立ち去ろうとするルイス。
しかし回り込まれた。
「参加者が必要なんだ頼むぅ!いっそ子供でも良いんだよ!」
「誰が子供だ!」
団長との押し問答に若い男が割って入る。
「すまないが一度経緯だけでも聞いてくれないか?」
「聞いたら帰る」
「それで良い、」
「帰ったら困r」
「リーヒート?黙りなさい?」
やっと静かになる男をよそ目に簡潔に経緯を聞くと。
キャラバンは現在七人の団員で内の三人が先に現地に入っている、しかし今いる四人は冒険者登録を行なっておらずこのままキャラバン登録すると冒険者不在の為に御前試合に出場することが出来ない。
「団長は冒険者に登録出来ない、そこのジェシーも同じ…そもそも俺が登録するとしても団長に確認が入るから無理っていう状況なんだ」
「完全にそこの団長の失敗じゃーーん!やだよこんなキャラバンで出場するの!…ん?あと一人居るんじゃないの?」
「あの子はねぇ…多分登録しようとすると数週間くらいかかりそうなのよねぇ」
やばいな?傭兵の言った通りに訳ありすぎる!
「じゃっ!話聞いたんで行きます!」
「………報酬の半分」
団長がつぶやく言葉にルイスは立ち止まる。
「え?」
「君が出場するならバハラ祭で得た報酬半分を報酬として渡そう」
キャラバンとして合理的な発言ではない、団員は止めに入る。
「ちょっとリヒト!」
「そうだ団長そんな金で釣るようなこと」
「…ちょっと考えるよ」
そう言ってルイスは外へ出て人気の無いベンチに座る。
「全部聞いてた?どう思う?」
「まぁまぁまぁ、思ってたより厄介事多そうだが美味い話ではあるな」
傭兵はニンマリと笑みを浮かべ話を続ける。
「しかもあの女等…結構美人だぜ?」
「はぁぁぁ…死んでも変態は治らないの?」
「考慮する一要素だろぉ?しかもあの荷台の中身、あれは相当面白いぞ」
「みたの!?なんだった!?」
「それはキャラバンに入んなきゃ言えないなぁ?」
「なんだよぉ結局入らなきゃ分からないじゃんか、闘技場で危なくなったら助けてくれるよね?」
「そりゃあ任せとけ!お前は俺が殺す!」
「バハラ祭終わったら次は教会に行く!!」
【ルイスは訳ありキャラバンへ参加した!!!】
不本意ながら命綱になった傭兵との会話が出来ないのに気付く。
「暫く傭兵と喋れないね?」
「任せろ、身ぶり手ぶりで会話くらい余裕だろ」
「勝手にエンガット?の暗号とか見せられてもわかんないからね??」
傭兵はおもむろに胸を二回叩き右腕を斜めに上げて左手でルイスを指さした。
「だからわからないって…」
「意味はオマエ、ノボレ」
「知らないのにわかるかっ!」




