第5話.第七開拓地
街道を抜けた所で街に入る門が見えてくる。
第七開拓地の主な役割は【下準備】故に商人が使う馬車の修理から冒険者の武器屋・水場や派遣される医師・理術師が使う医療品まで幅広く蓄える。
傭兵は次第に見え始める街を見ると感心したかのように
「第七か…俺の記憶では備蓄拠点だったがずいぶん手広くやってるんだな」
「へぇ?でも大きいのは良いことじゃん」
ルイスの言うことは的を得ていて大規模だからこそ商人や大量の荷物がある(お得意様)以外の冒険者でも使える預かり屋が運営されている。
「まぁな〜、今や商業国家らしいもんな凄いわ」
「傭兵って現役の時ここらへん全部森でしょ?」
「おっと?聞き捨てならんな?」
しまったこれは自慢&授業コースである
「いやいや?別にそんな…」
「まずだな…………
街に近づく前にルイスは第七の歴史をたっぷり説明された。
「街に入る前にそのリング見えないように隠しておけよ」
「隠すのはいいけど外してバックに入れたいんだけど…これ取れないしさぁ」
「いいやダメ、というかお前に主導権渡すとなんか知らんが絶対面倒になる」
「???、というかなんで隠すの?今は自然に装着される魔道具あるよ?」
コイツッ!しれっと俺を世間知らずだと言ったな?
「それはあの遺跡の宝だ、それが分かった商人や賊は腕切り落としてでも奪りに来るぞ」
「まじか…で、でもコレがあの場所からなんて…」
「お前宿で遺跡に通ってるの知られてるんだろ?」
ルイスは(アッ)という顔をしてリングを袖で隠す。
「お前、激萌え袖じゃねぇか不格好で逆に怪しいだろもっとこう…」
傭兵は笑いながらルイスの袖を整える。
「ありがと…幽霊ってそんなに物触れるの?」
「まぁ死人とはいえ600年も生きてりゃ要領も得るもんだ」
死んではいるんだよね?
「……教会とか興味あったり?」
「俺に聖水は効かんぞ」
「なんだって…」
「あと俺はしっかり幽霊として透明に透けてるんでヨロシク」
「えぇぇ?傭兵でしょ、守ってよ」
「憑いてる奴にしか見えないのは当たり前だろ?」
一蹴されルイスは悩みつつ街へ入る。
情報が集まるのは何処だろうか?
水場?賑わいを見せる広場?
はたまた暗い路地裏だろうか。
そんなルイスの期待を裏切る事実。
ここは商業的重要地点。
つまり情報を集めるなら市場!!
であるのだがココは来たる祭事に多忙を極める中央施設である。
ルイスは「一番大きい掲示板はどこ?」なんて聞いたばかりに商人の濁流に呑まれていた。
ガヤガヤと喧騒が渦巻く。
「君ちょっとどいて!」「おい!荷物のそばに立つな!」ガヤガヤ
「登録お済みの方々〜コチラです〜」「迷子か!?」「ちょっと聞いてた個数違うんだけど!?」ガヤガヤ
再び広場に戻る。
「ルイスゥ?生きてるかぁ?」
へんじがないただのしかばねのようだ。
「まぁあれは俺でもキツイわ、ああいった場所じゃなく情報が集まる場所……有るな、この状況でも適度に暇な場所」
「ヘへェ…?また行くのぉ?」
消え入りそうな声を絞り出すルイスをよそ目に連行された。
「ここだったら大丈夫だろ」
連れて来られた場所は物流施設。
「掲示板ないよ?」
「掲示がなくても内容を知ってる人が居れば得られる情報は同じだろ」
妙に納得
「でも忙しいのに話してくれる?」
「そこでだな…」
指を指すのは荷下ろし場所から
横の横の横の横の若い商人だ。
荷馬車に腰掛けながら眠そうな顔でペラ…ペラ…と紙をめくり足を交差させる。
「極めつけはスープが横にある!」
「おお!…とはならないけど、ふつうに休憩中だったらどうすんのさ」
「まぁ行ってみろって」
確信しているかのようにルイスの背中を押す。
「こんにちは〜、あっちの大きい場所はなんであんなに忙しそうなんですか?」
「…忙しそうっていうかキャラバンの人混ざってるからだと思うん…」
ルイスの明らかに商人ではない風貌に若商人が気付くと
「あ~と、君は参加者?」
「参加?」
「アレよアレはバハラ祭に行く商人と参加者を乗せるキャラバンがおんなじ窓口だから混雑してるの」
「あぁ!バハラ祭の!」
ルイスは納得した様子でもう一度窓口を見る。
バハラ祭。
隣国サハラが開催する大規模な祭り。
国や人種を問わず混成される催しが1週間開催される、内容は場所で変更され今回のダリミス国では傭兵文化を踏襲した御前試合が目玉だ。
「君は冒険者っぽいから参加かなって」
「ぽいって…これでも遺跡で、」
袖を捲くろうとすると。
「ばか、やめろ」
傭兵が腕をガシッと掴む。
「うおっ!なんだ!?あんた急に現れなかったか!?」
「え?え?見えるの?この人?」
若商人が傭兵に驚いた様子にルイスは混乱するのをよそに傭兵は続ける。
「どうも」
「あんたねぇ…隠密術か知らないけど心臓に悪いからやめてくれ…」
「すまんな、ところでバハラ祭ってのはなんだ?商人の知ってる範囲で良いから教えてくれるか?」
あの紋章…どっかで…?
「あ~と、兄さんは騎士か?それなら多分俺より詳しいと思うんだが」
ルイスはニヤリと
「それがこの男世間知らずでね――イデ!」
この感触はたんこぶくらいできただろうか?
「遠い所から来たから知らないんだ、この餓鬼よりは商人してる人間のが知ってると思ってな」
「その子…ふらついてるけれど大丈夫か?」
「大丈夫だ」
「あ~、まず今年のバハラは第三開拓地の近くに作った闘技場で御前試合をやるんだ、今回のバハラ祭規模は大きくて隣国からも沢山の貴族が来るから仕事とか宣伝に商人が集まる」
「なるほど、冒険者は御前試合に参加するって感じか?」
「そうなる、今回は主催のサハラから全身に宝石を埋め込んだ甲冑が景品になるとか、スーラ神との親睦が得られるとか、噂が絶えないが貴重な品ではあるそうだ」
傭兵は少しひきつった顔をしながら考える。
「…しかし神まで噂に上がるのか」
「噂だけれどね」
そうしている内に荷物の準備が整ったらしく呼ばれてしまった。
「参加するなら協会に行きなー!」
商人は手を振って去ってゆく。
「バハラねぇ」
「本当に知らなかったの?」
「今はサハラ【国】らしいが俺の頃は獣人が採掘した宝石をエルフが搾り取る地域だったのだが、ずいぶん変わったもんだなぁ〜」
傭兵は遠い目をする。
「そんな黒い歴史をしみじみ言われても…」
「行くか、バハラ祭」
「えぇぇ?闘技場でしょ?死んだ怪我したなんてなったらどうすんのさ」
「今のダリミスで、死人が出るような派手な祭りは許可されてないだろ、大丈夫だ」
「なんで前はあったみたいな言い方なのさ!」
ルイス達は市場を離れ冒険者が集う冒険者協会へ向かった。
「俺はまた消えるから登録よろしく」
「なんでだ!」
ルイスの苦難は続くよどこまでも。




