第2話.扉の先には決まって宝物
何があるのだろう?
何が待っているだろう?
やはり冒険は格別だ。
知らない場所・知らない人・知らない事と出会うごとに自分が大きく強くなる気がする。
扉に手を掛けゆっくりと開く、眼前に広がるは明るい室内に様々な箒や石鹸が置かれる物置。
少年は興奮した様子で
(すごい!すごい!誰もこの部屋を見つけられなかったんだ!)
目を輝かせて置かれた木箱や道具に飛びつく。
異様に清潔、異様に整頓されている場所 だが まず今はこの場所を知りたい、探したい気持ちが全てに勝る。
この木箱の中はなんだろう。
この石鹸はまだ使えるのかな?
なんという発見!なんという年季!なんという…。
ふとキラリとした3つの腕輪が置かれているのに気付く。
「ん???」
(掃除用では無いよな?)
貴重品だとしてここは掃除具置き場なのは明白。
「ん~?」
この中の一つを取ろうと手を伸ばす。
「やめるんだ」
寒気で一気に鳥肌が立つ、何処からだろう、後ろ?いや違う水路なら声が響く。
そもそもここは自分以外は居ないはず…。
「聞こえてるか?、とりあえず顔を上げろ」
反射的に指示に従うと壁に顔が生えている。
「わ!わ!」
なぜ顔!なぜ壁から!
「うるさいこと…うるさいこと…、冒険者ならもっと冷静になるべきじゃねぇか?」
壁に生えた顔かと思ったが貫通して顔しか見えなかったのか喋りながら室内へ顔、首、胴と次第に全体像を見せる。
「なんだお前!」
「なんだとはなんだ?そもそも誰に許可得てここまで来た?、、まぁ許可も何も権利者死んでるけど」
少年の質問に応える様子もなく半ば笑いながら男は続ける。
「まぁ…あれだ、そのリングはやめとけ、代わりに他のリングなら腕に着けて良いぞ?なんならもってけ」
「えっ?そうなの?」
男はドウゾドウゾという素振りを見せながらリングを指さす。
どうする?本当に持って行って大丈夫か?とって走って逃げるか?
しかしこの男の姿…上等な黒色の鎧を纏っている騎士か傭兵だ、しかも壁を抜ける?能力だとしたら…。
「あっ…じゃあ遠慮なく…」
挙動不審ながら恐る恐る再びリングを手に取る。
「まぁ、罠なんだが」男は悪びれもせず、ニヤリと口元を歪めた。
「えッ?」
手に取ると周囲一帯から小さな光が湧き満ち幾つもの竜巻の様に少年を囲い始める。
「なっ、なんだ!光!?」
「光?まあ良い!さぁ冒険者くん!ここまでご苦労様!これからは俺の為に働いて貰おうか!」
男から烈火の如く闇が噴き出す
光の粒を奪うように渦を作り始め
少年の視界を奪う様に包みこむ。
「眩しっ、、」
目を塞ぐがまるで目の中で光っているかのようでふらついてしまう。
「さぁ、これで君は俺の言う通りに…」
光が消え始めるがぼやけて男の輪郭しか見えない、だが男は少年の事をじっと見つめているようだ。
「あぁ?君は、なんか、、それなら…」
「なんだって?俺がどうし…」
ようやく視界が晴れてくると、いつの間にか右腕に二つのリングが装着されていて取り外せない。
慌てる少年をよそに男は木箱に座って少年に対して質問する。
「まぁ?あれだ、自己PRしてみろ、出来なければ殺す」
「ころっ!?…そもそもぴーあーる?というのは何をすれば」
不味い…本当にわからない、ここで死ぬのか?
「自己紹介してくれって意味よ」
「あっそれで許してもら…」
「まずは名前からだ」
男は答えてくれないようだ
「えぇぇと、ルイス・ルー・クラフト、です」
「はじめましてルイスくん、ここへ何しに来た」
「冒険に…来た、冒険で城を探してたら床が抜けて落ちて、ここを見つけた」
ルイスは真っ直ぐに男を見つめる、ルイスにとって冒険は目的であり手段。
冒険は他人にとっても相当の理由であると考えているからだ。
「冒険っておまえ…500年は経った遺跡に何用なんだよ…」
男は笑いながら
「ルイス、君が求める宝はそのリングを残して他は全て持ってかれてるぞ?ラスト賞は貰えてるがよくもまぁ…」
「ちがう、宝石とか宝は別にオマケで必要じゃない、冒険がしたいんだ」
真っ直ぐに見つめながらルイスは続ける。
「冒険して色々見れて楽しければ良いんだ、このリングも誰も持ち主がいないなら貰うけど他に欲しい人がいれば渡す」
膝を着き正座の体勢を取り頭を床に置く。
「だから…だから殺さないでぇぇええ!頼むよぉ!ピッケルとか全部置いてくからぁぁ、なんならそこら辺の掃除もするからぁあ!」
まさしく足掻き。
ルイス・ルー・クラフト今世最大の全力土下座、全力謝罪である。
コイツおもしれ!男は目を輝かせルイスを見る、幾世ぶりに現れた侵入者の七転八倒する態度に思わず笑みがこぼれる。
「まて、まてまてまて、ルイス落ち着け」
「?」
ルイスが顔を上げると土下座で赤くなったおでこが見え非常に面白い状況に男はルイスの顔を直視出来ない。
一息整えて男が話す。
「上の館の部分は廃墟だがここは俺が所有している、盗みの意思が無かったとは言え、君は侵入して許可もなく備品に触ろうとしたんだ、侵入した時点で普通は衛兵呼んでもおかしくはない状況だ、それは違うんです、で済ませるにはいかないよな?」
城じゃなくて館?廃墟の水路持ってて住んで??
ルイスに説明が続き混乱しているのを感じたのか要件をまとめる。
「このまま見逃すのは君にしか得が無いのは理解できる?アーユーオーケー???」
「りかいしたかも…あーゆーおーけー」
あぁ、なんて面白い子なんだ…といった顔で見られているのに気づかず主導権は男に委ねられた。
「だから君は俺の言うことを聞いてもらう」
「それで許してもらえる?」
「まず外まで行こうか、ルイス・ルー・クラフト」
また答えてくれなかった。




