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友人

 通勤時間をやや過ぎているとはいえ、まだまだ通勤する者共が皆いなくなるかといいますと、そうでもないようで、駅の改札には人が長蛇の列を作っておりました。ですがさすが日本人といったところでしょうか、一切の滞りなく改札口を通り過ぎて行きます。これはもはや芸術です。

 切符を駅員に切っていただき、汽車に乗りますと一人の子供が騒いでおりました。

「お母様!煙がこんなにたくさん出てますよ」

「そうね、沢山ね」

 母親のなんとも薄い反応を見ますと、なんとも居た堪れない気になります。子供の方は気にも留めていない様子ですが、こちらと致しましては、もっと子供と共に盛り上がってもよろしいのではないかと思ってしまうのです。それが子供の為なのではないかと思うのです。

 そんな情景を眺めながら汽車に揺られておりますと、ほんの数十分で目的地へと到着いたしたした。到着してすぐ、友人へと連絡を入れ、タクシーを捕まえ、友人宅へと向かいました。

 友人宅はとても大きな一軒家でございまして、それはもう目の前にしてみれば、思わず叫び出して逃げたくなるような程でございます。そんな一軒家の入り口前には小さな物入れ、もとい、ポストがございまして、友人は毎度その中へと鍵を入れているのでした。ですので、その中から私は鍵を取り出し、毎度友人宅へズカズカと侵入しておりました。今回も寸分違わず同じです。

「お~い来たぞ」

「そんな事、一々言わんで良いからはよ上がれ」

 寂しい奴です。こんな些細な会話が楽しめないだなんて、碌な人生を送ってこなかったのでしょう。やはり、こんな奴を生まないためにも親は子供には寄り添ってやるべきなのです。

「相変わらず冷たいな君は。もっと会話は楽しむべきだぜ」

「喧しい。どいつもこいつも同じこと言いやがって。俺は無駄を省きたいだけだ」

「そうかいそうかい。だがね、あんな言い方をされちゃ少なからず誰だって傷つくよ。せめて、そんな気使わなくていいから早くお上がり。みたいな言い方をおしよ」

「はいはいわ〜ったよ。気をつけるよ」

 友人はずっと手元の物を弄りながら返事をてきとうに返します。この友人は良い奴なのですが、どうも言葉が雑で態度もガサツなので、他の人間になかなか紹介だの小話だのができないのです。

「まったく勿体ないよ、君は。良い奴なのに」

「俺の良さはお前だけが知ってればいいさ。他の奴なんどうだっていい」

 こういう奴なのです。憎めない奴なのです。

「そんで悪いが、給料受け取りついでにまた手伝ってくれ。勿論金は出す」

「そりゃ構わないが、またフィギュアかい?」

「ああそうだ。今日は下地の吹き付けを頼む」

「承知」

 私は軽く承諾し、塗装用の隣の部屋へと入り、窓を開け、椅子に腰掛けました。

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