表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕だけがハーフなエルフの件について  作者: 澤梛セビン
ナナナシア星編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/72

51.おやつは500円まで

「名前ですか? 既にいただいていますが」


 旅の準備をしている時に、ふと思い立って金髪機人に問いかけた。

 機人は基本的に髪の毛(?)が白銀なんだけど、いま一緒にいる機人だけ、金髪だったんだよね。その時はここまで一緒に行動するなんて、考えていなかったんだよなぁ。


「いやだって、金髪機人だよ。通称とかだったら分かるけれど、名前としてはちょっと可愛くない気がするんだけれど」


 おやつに持って行くのだろう、バナナの房を顔の前に掲げて……いや、いつ見てもシュールだな。金髪機人は額の宝玉が収納を兼ねているんだけれど、収納には必ず額を寄せないと駄目で、重い物とかだと顔を物に近づけるなんて、変な絵面になっている。

 逆に、取り出す時は額の宝玉に手を突っ込んで……駄目だ、放送事故案件だ。


「いやそれより、何で門を出さないんだ?」

「門、ですか? 機人達が出入りする門のことでしょうか」

「そう、それそれ。緊急時以外の収納はさ、門を出して中の機人に運搬お願いすればいいんじゃない?」

「その発想はなかったですね。そうしましょう」


 さっそく体の前に扉を出して、機人に収納作業をさせ始めた金髪機人を見ながら、周りに山に積まれた物資を眺める。

 目的地はだいぶ絞れたし、物資の準備も順調だ。移動の問題も解決できた。これだけあれば、現地で対応できるか。


 あとはまぁ、実際に行ってみて判断するしかないな。


 ミモザは――必死に何かを選んでいるように見える……って、人形か。この間、新東京都でプレゼントに買って上げたっけ。消えずに、残っていたんだな。


「いやそれ、全部持って行けばいいんじゃないかな。別に収納量が限られているわけじゃないんだし」

「……言われてみれば、そうね。でも別に持って行かなくてもいいんだけれど」


 そう言いつつ、ちゃっかり収納するミモザ。ある意味思い出だからな、いいと思う。僕も、携帯ゲーム機を収納に突っ込んであるし。


「ところで私の名前ですが、キキは――」

「うぐっ……」

「きゃあっ――」


 突然の重圧に僕と、隣に来ていたミモザがその場でうずくまった。息が詰まって呼吸が細くなる。止めどなく涙が溢れてくる。


 いったい、何が……?


「おや、白いオオカミ……ですか? 珍しいですね」


 いないはずの存在が、視界を横切り目の前で立ち止まった。見上げるほどの大きな白狼がじっと、金髪機人を見ている。

 フェンリル、だよな。相変わらず、存在が重い。指の先から冷たくなっていくような感覚に、謂れのない恐怖を感じる。


 あの時地球で遭遇した、僕の知っているフェンリル。だと思う。でも世界が変わっているのに何故ここにいる?


「イブキ……怖い……」

「楢崎教授、いないんだぞ。どうすればいい――」


 フェンリルの視線が僕を捉えた。そしてフッと、体が軽くなる。


「恐らくですが、あなたの名前が『キキ』なんですね。私は機人のキキ……は、名乗れなくなりましたね。ではやはり、金髪機人です」


 フェンリルが頷いた気がした。

 だけじゃなくてゆっくりと縮まっていって、子犬くらいになった。またか。また、このパターンか。

 それより『楢崎教授』に反応していなかったか?


「キキ、でいいのか?」

「わふ」


 僕の問いに可愛らしく鳴く。さっきとの落差に、苦笑いが出た。

 間違いない、このフェンリル――キキは、僕たちの言葉を理解している。いやしかしキキって何かのアニメに出ていなかったか?


「楢崎教授なら、移民艦に乗っていた記録があります。ですが、柏崎一家とは別の移民船ですね。優先度は、低いと思われます」

「場所は近いのか?」

「若干、遠いかと。防護服ロボットで、半日の距離でしょうか」


 金髪機人の言葉に何かを理解したのか、キキの存在が薄くなっていき、そして消えた。行ったのかな、たぶん行ったんだろうな。


 それより、なにその名前。


「さすがに、防護服ロボットは安直すぎないか?」

「では防護ロボコンで」


 思わず、眉間を押さえる。そこじゃない。


「いや、さすがにそれはポンコツ過ぎるんじゃないか?」

「ポンコツですかね、それは私たち機人にとっての最大の褒め言葉ですね」

「いや何でさ」


 ミモザと顔を見合わせる。

 そして気づく。これは、わざとか。本当の意味で空気が軽くなったのを感じた。


「私たち機人は、機械です。ゼロかイチですよね?」

「まあ、知ってる。コンピューター囓ってるし」

「ですから、ポンコツに見えるのであれば…………」

「うん、うん? いや、タメ長いな」

「忘れました。嬉しかった、それでいいです」

「……いや、軽くね?」


 でも、気遣いが温かい。


 大きく息を吐いた。


「そっちの機人さんさ。おやつは、500円までな」


 キキとの遭遇に扉が収納されていたらしい。バナナを大量に抱えて、門が開くのを待っている機人に、思わず声をかけていた。

 まあ、首を横に振られたけれど。




 物資をほぼ同じ量ずつ収納し、取りあえず準備は完了。念のためテントと、プレハブハウスも持って行くことにした。状況に応じて、使い分ければいいと思う。


「方舟側は特に異常なしね、離れていても特に問題はなかったわ。でも不安だから、早くモモカさんと合流してマシキを復活させたいわね」

「それな。魔式アプリ、また使いたい」

「念のため、各設備に機人を配備していきます。ちなみに、500円では何も買えませんでした。残念です」

「売ってないしね、知ってる」


 そんな、掛け合いをしながら防護ロボコンを装着した。

 いや言わないで、ミモザが気に入っちゃったんだ。何だよ防護ロボコン。慣れれば普通に見えるマジック。人生諦めが肝心。




 方舟から外に出ると、辺りは夕焼けに赤く染まっていた。

 穏やかな風が吹いていて、吸気口から少し冷たい風が入ってきた。有事以外は外気に触れられるように、防護服とロボットを改良して貰ったんだよね。

 若干、防護服の優位性が薄れる気はするけれど、森の薫りは絶対に吸いたかった。ここは譲れない一線。


 同時に、音も拾える。後々、重要になってくるはず。


 そして、この時間に出発するのには、意味がある。


「まず森で、プレハブハウス出すのよね?」

「行けるところまで進んだら、そうだね。いい場所を探して設置しよう。それで夜の危険さとか、魔物や魔獣、あるいは動物の生態が掴めると思う」

「簡易、ダンジョンですね」

「ミモザがいてくれるからこそ、できる無茶なんだけどね」


 ふっと、風が流れた気がした。

 キキかな? たぶんまた、会えると思う。


「ともあれ、急ぐ旅じゃない。ゆっくり確実に、ご安全に」

「それ知っているわ。工事の現場で言っていたの聞いたことがあるわね、ふふっ。ご安全に」

「私は防護ロボコン着ていませんから、念入りに。ごごごご安全に」

「……突っ込まないからな」


 そして、二人と一機はジェット推進で一路、西へ。


 夜のとばりが、ゆっくりと下りていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ