表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕だけがハーフなエルフの件について  作者: 澤梛セビン
宇宙編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/72

43.機人の衛星

 姉から、機人の衛星と接続したって連絡が入ったのは、ちょうど百貨店を出たところだった。

 向こうと話をして、情報共有をすることになったんだって。その一環でって言うのかな、お互いの船員を交換視察するようで、そこに僕たちにも来て欲しいって言われた。いや何でだろう。


 ミモザと顔を見合わせて、二人して首を傾げた。


「呼ばれる理由が、ちょっと分からないわね。イブキまた何かしたの?」

「いや待って、僕が何かする前提やめてよ」

「だってイブキだもの。無自覚で世界改変していたじゃない。多分だけれど、名指しで呼ばれたんじゃないかしら」

「まさかぁ」

『いや、そのまさかなのだがね』

「…………電話まだ繋がってたんだ」


 まあ、今日の予定は全部消化したから、とりあえず行くことにした。




 新新宿の駅前でタクシーを拾って、方舟唯一の外部出入り口の、出入船待機ロビーへ向かう。どうやらあの巨大なドアと、機人側の衛星のドアとを接続したみたいで、直通になっているらしい。いつかの記憶にあるエレベーターの前にタクシーが止まる。


 止まったんだけれど、一瞬、降りるのをためらった。

 ミモザと、顔を見合わせる。


「なにこれ、何かの駅?」

「方舟ターミナルって書かれているわよ。確かにここが入り口なら、駅が必要なのも分かるわね」


 エレベーターの道を挟んで反対側、森が切り開かれて大きな建物が建っていた。道の上には歩道橋もあって、実際にターミナルとして使うように作られているんだと思う。

 ただ、できたてなのかウィンドウガラスの向こう側は無人で、明かりだけが室内を照らしていた。


 何かが気になるのか、じっと方舟ターミナルを見ているミモザの手を引いて、エレベーターに乗り込んだ。


「あとでさ、また寄ってみようよ」

「既視感って言うのかしら……あの建物の中で、イブキとご飯を食べたことがある気がするの。何だか不思議だわ」

「それは、余計に寄ってみないとかもなぁ……」


 前にも、こんなことがあったなあ――なんて考えていたら、乗っていたエレベーターが止まった。扉が開くと、いつか見た待機ロビーは静まりかえっていて、ちょうど正面のベンチに姉が座っていた。

 僕たちが着いたことに気がついて、見ていたパソコンを閉じてから立ち上がって手を振ってきた。


「弟とミモザ君、デートを楽しんでいたと思うが、すまなかったね」

「大丈夫だよ。今日の目的地はみんな回ったから、あとは海でも見に行こうかなって思っていたくらいだし」

「海、いいわね。この視察が終わったら行ってみたいわ」


 え、フラグ?


「視察と行っても1時間程度の予定だ、十分に時間はあるだろう」


 記憶にある減圧室を通って、宇宙船が停泊するドッグに入ると、10機の宇宙船がそのまま停泊したままだった。気になって姉に聞いたら、その辺も含めて協議中なんだとか。

 扉を接続したんだから、てっきり相手方の衛星に船を移動させるんだろうって思っていた。ところが、どうやら機人側が方舟に移住することを望んでいるらしい。初耳なんだけど。


「移住の話と同時に、弟を機人の衛星に招待したいと。さすがにわたしも首を捻ったんだけれどね、真意が読めなかったのさ」

「僕だけ?」

「相手方の指定はね、弟だけだ。同行者については制限がないようだったから、まあ必要最低限のメンバーとしてこの3人だけで行こうと、楢崎氏と話がまとまった次第さ」

「僕、何もしていないんだけど」

「知っているさ。わたしとしては、敢えて方舟の運営からも遠ざけているんだけどね。それにもかかわらず、予期しないところで弟の影響が垣間見えることに、正直頭を抱えてはいるが」

「えっと……なんか、ごめん」


 宇宙船の間を歩いて、やがて大扉に辿り着いて、思わず息を呑んだ。

 開いた大扉の向こう側の、機人の衛星の宇宙船ドッグには、100人を超える機人が並んで全員が揃って頭を下げていた。これ、どうなっているんだろう。


 境界線で姉が一旦止まったので、僕とミモザも後ろで止まった。


「意図を問いたいのだけれど、聞いてもいいかい?」

「柏崎イブキ篤輝様に、最大限の敬意を」


 先頭の金髪の機人が代表者なんだろう。厳かに告げてさらに深く頭を下げると、全員が倣って頭を深く下げた。

 あれ、あの金髪の人って、森の小径に倒れていた機人じゃなかったっけ?


「もしかして、あの時の機人さん?」

「いえ、方舟側にいる個体は、私の機能を分割した下位個体。娘のような物であると認識いただければ幸いです」

「あ、別人なんだ」

「やはり本質の意図が分からないんだけれどね、説明をお願いできるかい?」

「はい。ご説明いたしますので、こちらに――」


 機人の人垣が割れて、通路ができた。先導する金髪機人の後を、何だかちょっと不機嫌な姉が付いていく。僕もミモザと顔を合わせてから、その後に続いた。




 奥にあった扉から通路に入り、少し進んだ先のエレベーターに乗り込んだ。上に昇りだしたと思ったら、横にも移動していくエレベーターに、不機嫌だった姉が感嘆の声を漏らしている。しばらく縦や横に移動していたエレベーターがやがて、ゆっくりと止まった。


 扉が開いた先は、広い応接室だった。

 白磁の床は艶やかに、給仕の機人の足音を響かせている。黒を基調とした調度品に、壁は一面ガラス張りになっていて、広がる宇宙に星が煌めいている。なるほど、応接室だ。


 宇宙を見ていたら、少し離れた宙域に、滲みだすように宇宙烏賊が顕れた。同時に衛星から出撃した数十機の宇宙船が、光線の集中掃射であっという間に宇宙烏賊を殲滅する。

 応接室に数人いる機人が、特に反応を示さないことからして、たぶんこれがここの日常なんだろうな。


「どうぞ、そちらに。お飲み物を用意させていただきます」


 金髪機人に勧められ、姉、僕、ミモザの並びでソファーに腰をかけた。


「この今いる世界線は、数千億ある世界線の中でもっとも濃く収束された世界です。そして過去のどの世界線においても、イブキ様は私達を救い、そして導いてくださりました。その記録が、この衛星都市キジンに記録されています」


 テーブルに置かれたのは、お茶かな?

 僕たちの視線が一瞬お茶に向いたタイミングで、金髪機人が話を始めた。


 隣で口を開きかけた姉が、途中でやめたのか深く息を吐いたのが分かった。

 何となく言いたかったことは分かる。話の内容が本質的に意味が分からないんだけど、きっと僕がまた何かしたんだろうなって。


 ただ抽象的すぎて、何も響いてこないんだ。そこに悪意はないにしても。


「機人は個であり、全です。無生物で魂がない分、記録は全ての並行世界を網羅しています。そしてこの未来はあの星、ナナナシア星で終点を迎え、そして再び始まっているのです」


 左を見る。

 姉が眉間に皺を寄せて目をつむっている。


 右を見る。

 ミモザも、額に手を当てて悩ましげな表情をしている。


 僕は天井を仰いだ。どうしよう。


 ……これ、何のことだか、分かる人いるのかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ