クリステル=アディール 9
その日のうちに、宰相である父に報告して、学園がお休みの日と放課後に研究所分室に通うことが許可された。お手伝いとして支払われる賃金を、生物学の資料を対価としていただいた。
「一度サンプルを作ってから効果を検証したほうがよろしいかと思います。」
「この花を乾燥させるには、火と風の魔法石が必要ですね。」
ダスト様は、保管庫から火と風の魔法石をだした。
「ダスト、ここでやっては周りの植物にも影響しちゃうわよ。」
確かに、ここでやっては火事になりそうだわ…
「メレイカ様、この分室では魔法を使用しても大丈夫ですか?学園ではあまり推奨されておりませんですの。」
「ええ、ここでは特別に許可されています。」
許可をとった私は、手に小さな箱をイメージした。
透明な箱は、花を囲むように展開させた。
「この空間の中でしたら、どんな魔法も外にはでませんわ。」
「これは…アディール家しか使用できない空間魔法ですか?初めてみました。」
驚いているダスト様には、申し訳ないが、私は魔法の才能がないらしく、この箱を作る空間魔法しか使用できない。
お父様やお姉様は、空間転移や、国を覆うほどの空間結界なども作ることができる。
「今のうちに、サンプルを作ってしまいましょう。」
ダスト様とメレイカ様は頷き、乾燥するための火の魔法石を発動させると同時に、風の魔法石を展開させた。ダスト様自身の魔法なのか僅かに水魔法の気配もした。3つは混ざり合い、花の周りを取り囲んだ。
完全に混ざり合った瞬間、金色の光を放った。
「できた……」
手に取ると、完全に乾燥しているが、ほのかにラベンダーのような香りがした。