クリステル=アディール 10
ダスト様とメレイカ様は、出来上がったポプリの解析を一週間ほどで終えた。
解析したところ、ポプリには"安定、平常心、安らぎ"の他に特殊な"自動気力回復”という属性が添付されていた。
特殊属性は、めったに添付されない効果であり、今回作成したポプリのみなのか、他のポプリでも同じ効果がでるのか、実験が必要らしい。その後の商品化される場合を考慮して、制作者名だけダスト様とメレイカ様と私の名前が登録される。
ひとまずその後のことは、ダスト様やメレイカ様にお任せすることにした。
「クリステル様が所望していた、生物学のことですが資料をまとめましたので、こちらをお読みください。」
「ありがとうございます。」
束になった資料は、わかりやすく図もはいっていた。この量だったらすぐ読めそうだわ。
「今回のポプリの成果で、王家から報奨金がもらえそうなんです。ダストの念願だった野外調査も行けそうなんですよ。クリステル様も一緒にいかがですか?ポプリの考案者ですし。」
「メレイカ、野外調査は危険が伴う。隣国に近い場所となり、夜盗や危険な動物もいる。こちらも騎士を雇って護衛つきとなるだろう。行くとしてもアディール家に許可をとってからになるだろう。」
いったん、お父様に確認するために野外調査の同行については保留にさせていただいた。
☆★☆
自宅に帰り、頂いた資料を確認しようとしたとき、ドアからノックの音が響いた。
「クリステル様、ナターシャ様がお話があるとのことです。」
お姉様付のメイドだった。お姉様からお声かけいただくのは珍しかった。
「わかりました。すぐ参ります。」
私はさっそく、応接間に向かった。
応接間には、お姉様がソファーに腰掛けていた。私は一礼して向かいに座ると、お姉様のブルーサファイアの瞳が私の瞳を捕らえた。
「ウェル様から最近のあなたについて問われました。私とウェル様が婚約解消したことを、あなたが気にしていると。」
「お姉様…」
「私はすべて承知の上で、婚約を解消したのですよ。婚約破棄する前のウェル様とあなたは、お互いに思い合っているのが手に取るようにわかりました。私のことは気にせずに、このまま婚約なさい。そうしないと、私だって前に進むことができません。」
お姉様とは、小さい頃から距離があった。魔法の力が強く、次期当主としてお父様からの期待も大きい。
そんなお姉様を、私は尊敬すると共に嫉妬もしていた。そんな私の気持ちを汲み取って、私と接していただいているのに気がついたのだ。
「私は無神経で駄目な人間だということに、お姉様が婚約破棄してから気づいたのです。小さい頃から、お姉様が殿下のこと特別に思っていることを知っていたのに…」
「でも、殿下はあなたを選んだのよ。」
私はスカートをぎゅっと握りしめて、お姉様と向かいあった。
「研究所で何をしているのかわかりませんが、立場をわきまえなさい。ウェル様は、半年以内に王命をだすとおっしゃっていたわ。婚約したら、学園を辞めて王家へ入ることになる。それまでに学園でやっていることを整理なさい。」
「…はい」
その場では、頷くことがやっとだった。殿下は本気で私を婚約者にするつもりなんだ。
でも、お姉様から私に言うように先導させるなんて殿下はひどい…。好きな人から、違う人を婚約者にすすめるなんて間違ってる。
あと半年以内に、婚約が成立してしまう。
なんとか阻止しないと!




