クリステル=アディール 54
目を開けると、そこは大きな庭園が広がっていた。足下にはふさふさの芝生があり、周りの石が円をかくように私の周りを囲っている。
まるで石で作られた魔法陣みたい。
庭園の周りには、色とりどりの花が咲き誇り、たくさんの小鳥の囀りが歌を唄っているかのようにリズムが奏でられていた。
ここはどこかしら?
天国・・・ではないわよね・・・?
思った通り、先輩やクレイブとも離れてしまった私はこれからどうしようかと困惑した。
「お姉さん、僕がいるよ!」
パックが胸元から、顔を出した。
「よかった!いま、どうしようと思っていたのよ」
「お姉さんと契約してるから、ついてこれたみたい。待ってて、ちょっと高いところからみてみるね~」
パックは、くるくると空高く飛び上がり、キョロキョロ周りを見渡して、私の肩まで下りてきた。
ここって誰かの庭なのかしら?遠くの方にお屋敷の屋根みたいなものが見えたらしいし、とりあえず、屋敷に向かって歩いてみることにした。
みんなは、契約の石碑までたどり着けたのかしら・・・心配でなんだか胸がどきどきする。
「パック達妖精は、なんで人間と契約したがるのかしら?」
「そんなの、面白いからだよ!妖精は、人間みたいに喜怒哀楽をもたないんだ。だから妖精は、人間みたいな気持ちを知りたいから契約して人間の気持ちをもらうのさ」
「あら、人間の気持ちを知りたいというのが
むしろ、人間ぽいと感じるわ」
どういうこと?っとパックが顔を傾けた。
「人の気持ちを知りたい。そう思うのは人間も同じよ。契約したいというのも、妖精が人間のことを好きだからではなくて?」
自分の気持ちだって分からないのに、他の人間のことだってわからない。だから、知りたいと思うのは、普通のことだわ。妖精だって同じように思えた。
「私はもっとあなた達、妖精のことを知りたいわ。どんなものを食べて、どんな風に過ごしているんだろうとか・・・」
パックは、私の言葉にふにゃっと笑った。
「お姉さん、面白いねぇ。人間は僕らのことを忌み嫌うか、怖がるかしかないのにね・・・いいよ!妖精のことを教えてあげる」
お願いすると、パックは身振り手振りで教えてくれた。妖精は木や水、自然物から生まれる。食べ物は、自然のものから出てくる魔力らしい。木や水も微小な魔力を持っていて、それが蒸発して空に舞い上がり、雨に混じってまた地上におりてくるんだって。
暇な時は妖精同士で集まって、追いかけっこで遊んだり、時々人間の町を見に行ったりしているんだって。
時々、物がなくなったりするのは妖精の仕業みたい。この森にいると、はっきりと姿がみえるけど、町にいるときは姿を消すようにしているみたい。
「パックは、どこから生まれたの?」
パックは、上を指差した。
「僕は太陽や月の光から生まれたよ。こう見えても特別な妖精なんだよ」
えっへんと言うように、胸をはっている。
「なら、私は特別な妖精さんと契約したのね」
嬉しいわっというと、パックも嬉しそうな顔をした。
パックと話しながら歩いていると、大きいお屋敷に到着した。屋敷の門をみると、見たことがある紋章だった。
これ・・・王家の紋章かしら。
よくウェル様の馬車についていたような・・・
考えているうちに、パックが屋敷の中にふらふらと飛んでいく。私はそれを追いかけるように窓に近づいた。
「おや、君は・・・?」
家の中から、男の人の声が聞こえた。
窓から中を伺うと、男の人の後ろ姿がみえる。
あの後ろ姿は・・・
もっとよく近づこうとしようとしたら、後ろから肩を叩かれた。
「えっ?」
後ろを振り向くと、大きな犬と黒い執事服をきた人がたっていた。
「あ、勝手にはいってごめんなさい。これには、訳がありまして・・・」
慌てて言い訳を言おうとすると、犬ががうがう吠えて近づいてくる。
あまりの鳴き声にびっくりして、後ろに少し下がろうとして一歩踏み出した。しかし、靴の踵が石にひっかかり、尻餅をついてしまうった。
家の中から、ガチャリと音がして横をみると
金髪の王子様がそこにいた。




