クリステル=アディール 53
洞窟の道はひたすら上に伸びており、上に上に進んでいった。途切れた所から、光が見えたから地上にでれたかと思ったら、目の前には、大きい湖が広がっていた。
あれ、ここってもともと湖の中だったわよね?下に落ちたり、上に登ったりしたのでどうも今どこにいるのかわからない状態に陥っていた。
「パック、この道であってるの?」
パックは、鼻をくんくんさせて湖の周りを飛んだ。何かを見つけたみたいで、手をふっている。
パックの側まで行くと、湖の中に洞穴がふたつ空いていた。ふたつの洞穴の間に大きな四角い石が佇んでいた。どうやら、文字がかいてあった。
(古の契約によって、ここに刻む)
ん?これだけ??
怪訝な顔をしたのが、ばれたのか先輩とクレイブにくすくすと笑われる。
「この穴に本来の石碑があったみたいなんだけど、誰かにもってかれたみたいだねぇ」
パックにアクアが詰め寄る。
「あなた、どこに行ったかわかりませんの?」
「僕だって初めてきたんだよ~わからないよ」
落胆したアクアをみて、私ははっと思いついた。
「ここまで一方通行だったから、この穴を辿っていけば、犯人の場所に行けるのではないかしら?」
「行くとしても、二つ穴があるんだぞ。なにがあるかわからないんだ。俺はクリスから離れないからな」
私も先輩と離れるのは心細い。二つ穴があるからといって、二手に別れるのって安易な感じがするわ。そうだ・・・
「二つの穴なんて気にせずに、みんなで一つの穴に入りましょう。違うなら戻ればいいですし」
俺はどっちでも従うとクレイブは言ってくれた。反対意見もなしということで、向かって右手の洞穴にむかった。
湖に足を入れると、ぱしゃっと少し冷たかった。
「あれ、妖精の粉の効果はきれたのかしら?」
「ここは、妖精の特別な場所だからかきかないみたいだねぇ・・・」
えー、水の中に潜るしかないってこと!?前世では泳いだことあるけど、この世界では一回も泳いだことないのに・・・
自分で行くと決めたのはいいが、心細くなってしまった。
先輩に手をぎゅっと握られ、やめとくか?と聞かれたが、先に進むしかないことはわかっているので首を振った。
そういえば、前世で海に潜ったときに、酸素ボンベでイルカなどを見たことを思い出した。
そうよ!スキューバダイビングよ!
酸素ボンベっぽいものを結界箱でなんとか作ればいいのよ。
結界箱を手のひらに展開した。
中に酸素を閉じこめるようにイメージする。
一見、普通結界箱にみえるけど大丈夫かな・・・
結界箱を口元に当ててみるが、正常に呼吸はできた。2人にも口元にもおなじように展開する。
あとは、服が濡れるのをどうにかしたいので、薄く結界箱を展開して服の周りに定着させてみる。なんだかバリアーぽくなったけど、これで水がはいってこれないはずだ。
「いきましょう!」
さっきの弱気は嘘のように、いきようようと湖に足を踏みだした。
妖精の粉とは違って水の中の寒さは、結界箱では和らげることができなかった。
ライアー先輩に結界箱に火でもいれればよかったかしらと考えると、先輩と目があってしまった。
ドキッとして、足を滑らしそうになるも、先輩とクレイブが私の両手をささえてくれた。ごめんごめんのポーズをとる。
体制を立て直し、口パクでありがとうと言うと、先輩はにっこり笑い、クレイブはぷいっと顔をそらした。
ここが恋愛漫画だったら、酸素ボンペに穴が空いて空気がなくなるっ!!という状態に落ちいるのだけれど・・・
残念ながらそんなイベントがおこるはずもなく、すぐに穴に到着することとなる。
ゆっくり1つ目の穴に近づくと、穴の中で光り輝く魔法陣を見つけた。
もしかして、これは転移魔法陣かもしれない。私は魔法陣を指さして、2人に知らせた。そして、3人同時に魔法陣の上に乗ってみることにした。
魔法陣は3人を囲うように光りだして、転送魔法のように体がどんどん透けていく。
あれ・・これって私大丈夫よね?
先輩と同じ転送魔法だったら、転送される位置が2人とちがっていまうのでは・・・
と思っているうちに意識が途切れてしまった。




