クリステル=アディール 51
先輩に腕を捕られ、胸に抱かれたままひたすら暗闇に落ちていく・・・
このまま落ちたら、まずいわ!
ここがもし深い谷底だったら・・・
私は、魔力を集めて結界箱をいくつか作った。落ちても痛くないようにと願いを込めて、私達の足元にくっつけた。
やがて、下の方で微かに光が見えた。底が近づいていたみたいだ。あわてて、足元の結界箱を増やす。
3人の体が、結界箱に触れて、ぽよよんとバウンドした。
「なんだこれ?」
驚いた先輩は、つかさず私をみる。
私がやったってバレバレらしい。結界箱をぽよぽよ指でつまんで柔らかさをアピールした。
「簡易バージョンのクッション型結界箱ですよ」
男は、落ちたことにびっくりしているのか、クッション型結界にびっくりしているのか、呆然としていた。
先輩に無事でよかったと伝えると、バカやろうと言われておでこをコツンとされた。先輩の顔をみると、とても心配そうな顔をしている。ひとまず、ごめんなさいと謝った。
抱えられて落ちたせいか、距離がとても近い。腰には手を回され、ぴったりとくっついている。見上げると、私の真上に先輩のきれいな顔がある・・・
意識すると自然と頬が、熱くなった。女性なら誰しも、こんな状況だったらドキドキしてしまうだろう。先輩から逃れようと、腰に回されている手を離そうとしたが、固定された手が強くてなかなかはずれなかった。
私の行動にため息をついた先輩は、私の首をさすった。
「クリスは無茶しすぎだ・・・」
先程、剣筋を当てた首はすでに血はでていないが、うっすらと赤くなっていることは予想できた。
「痛くないですよ?本当に斬るつもりはなかったですし・・・妖精を脅すための材料にしただけですよ。でもそのおかげで、石碑への道が開きました!」
首を自分から斬るための度胸なんて、私にはない。苦し紛れに考えた策だった。私の言い訳を無視して、先輩は再び私の体をぎゅっと抱きしめた。
頬に赤茶の先輩の髪の毛がくすぐったいなっと思ったときには、首に柔らかい感触があたった。
「ら、らいあー先輩?」
「ごめん、さっき少し油断した。あの男に、お前が斬られるかと思った」
耳元で、先輩の熱い息があたる。くすぐったさを感じて体をよじると、首の傷口に先輩の唇が触れる。
「クリス、結界箱使いすぎ。---そこし、魔力わけるぞ」
「えっ」
えぇぇえええ!
またキスされるのかと口をガードするも・・・
口ではなく、傷口を唇で吸われ、恥ずかしさのあまり体が震えた。先輩の柔らかい舌で、首筋を撫でられると、ぞくぞくしすぎて体の力が抜ける。体を離すこともできずに、先輩の熱い魔力が体に流れる。
傷を舌でなめらるたびに、自分の口からでる声がさらに羞恥を誘った。
「んっ・・・せ、んぱいもう・・・」
私の体が熱いのか、先輩の吐息が熱いのか、わからなくなるぐらいに頭が沸騰する。やっと離された時には、立ってられないほど体が熱かった。
「大丈夫か?」
先輩の問いに、首をぶんぶんと横に振った。
涙目で、もうだめですっというと
煽るなと言われるし、もうどうすればいいか・・・
そうこうしているうちに突然、床が燃え上がった。
燃え上がったのは、襲撃者がいる男の周りだった。
先輩は男に目線を移して、にやりとした。
「ここに落ちた時に罠をしかけといた。また剣を振り回されたら厄介だからな。」
どおりで、こんな悠長に魔力譲渡できたんですね・・・
余裕の先輩に少しびっくりしました。
「おい、この火を消せよ。」
襲撃者の男はイラついているようで、私達を睨みつけた。
「お前が、危害を加えないと約束したら消してやる」




