クリステル=アディール 52
「主様・・・」
男と一緒にいる妖精は炎が弱いのか、とても辛そうにしていた。
男は妖精をみて、舌打ちをして剣を床に放り投げた。
「・・・危害を加えないから、火を消せ」
先輩は男にむかって、叫んだ。
「俺達に危害を加えないと契約すると誓え!契約にはお前の名をがいる」
どんどん、男の向かって火が迫る。
私は一歩前に出ようとするが、先輩の腕で止めさせされる。
「誓う、誓うから早くしろ!俺の名は・・・クレイブだ!」
先輩は頷き、燃え盛る火をまとめて空中に押し上げた。空中に浮いた炎は、次第に一本の鎖のように変化していく。鎖は一直線に男に向かって、男の胸を貫いた。
「くっ・・・」
「主様っ!!」
妖精が心配するも、男は大丈夫だといって座り込んだ。
「体内に俺の魔力を入れ込んだ。俺達に危害を加えようとしたら、炎が暴発するからな」
「わかった」
男は、素直に頷いた。
男の服にちりちりと、残り火のカスがついていたのに気がついた。もっている軍手をはめて、オトコに近寄って服をパタパタと払った。男は、びっくりしたようで私を見上げた。
「私は、クリステル=アディールと申します。クライブさん、良かったらあなたのことを教えていただけませんか?私はあなたのことや、隣の国のことを知らないから・・・知っておきたいんです」
「お前・・・」
男は、私を警戒しているようだった。警戒する男の元に、いままでどこにいたのやらパックがひらひらと飛んでいく。クライブの妖精と向かって、にこりと笑った。
「ねえ、君は水の妖精かい?僕は、パックだよ。」
「水の妖精のアクアですわ。主様に触らないでくださいます?」
私はあわてて、男から離れた。
「びっくりしたよ~。アクアは、その男の人と主従契約を結んでいるのかい?」
主従契約?どういうことだろう。クレイブを見ると、諦めたように口を開いた。
「君、この人の大事なものをたべたでしょ?」
パックが珍しそうに、アクアをみていたが、男は、アクアを自分の元に抱えなおした。
「アクアは、俺の妹だ。」
「あなた達は、攫われたエメラルダの民が隣国でどんな扱いをうけているかご存知ですの?」
私は首をふった。メレイカ様の話にでてきたが、今のこの時代でどうなっているかまでは知らなかった。
「攫われたエメラルダ人は、隣国ダリア王国の異性と婚姻させられる。エメラルダの血筋を増やして、飼われるんだ。十分増えてきたら、魔力を使用できるものは戦争に駆り出される。隣国ダリアの土地は、なにもない砂漠のような場所だ。十分な食べるものや家畜がとれないため、隣のスカル王国のものを奪うために、俺達が使われる。」
「エメラルダに支援を求める。もしくは、逃げるということはできないの?」
なにもわかっていない私に、アクアは侮蔑の眼差しを向けた。
「あなた、何も知らないんですわね。エメラルダ国は、攫われた者を探しにこない臆病な国なんですわ。この国に逃げ込むとしても、魔力があるもの・・つまり、エメラルダの血筋のものしか入れないわ」
「俺には、弟と妹がいる。エメラルダとしての血筋は魔力を有しているかいないかだ。妹は、魔力枯渇によって亡くなった・・・弟は魔力をもたないため、ダリア王国に人質として囚われているし、エメラルダ王国にはいることができない。俺は、この国に囚われている契約を反故にするためにやってきたんだ」
話を聞いて、私は怒りで手が震えた。知らなかったとは、言えないわね。なぜ、エメラルダは保守的なのだろう。隣国のことを知らなかったとか?いや、そんなはずはないだろう・・・
はからずしも、私とクライブは、目的のものは一緒だ。
先輩と目を合わせると、頷いてくれた。
「私達も、この国の契約について調べているの。反故するかどうかは、契約次第だけど一緒に調べると言うのはどうかしら?」
男の前に、右手を差し出した。男は、警戒しつつも私の右手をとった。
「あいつに契約させられたし、ここまできたら一緒にいくしかないだろう」
私はにっこりして、男の右手をひっぱって立ち上がらせた。
よく見ると、黒い装束で、黒髪が顔にかかっていて暗いイメージしかなかったが、髪の隙間から端正な顔が見えた。
あれ、よく見るとすごいきれいな顔をしているわ・・・
後ろにいるライアー先輩もウェル様もそうだけど、この世界のひとって、かっこいい人しかいないのかしら。みんな美形やら美女がおおかった。
私は、クレイブの髪の毛を上にあげて、顔を見つめた。
「あなた、こうしたほうがいいわよ。かっこいいのにもったいないわ」
その途端、アクアに手をぺしぺし叩かれた。
「主様に気軽に触らないでくださいましっ」
「お前、貴族の娘だろ?なのに共は、騎士ひとりだし、敵にこうして触ってくるって変な女だな」
昨日の敵は、今日の友です。というと、なんだそれっと笑われた。先輩の目を見ると呆れた顔をしているし・・・
こうして私達は、再び石碑にむかって進み始めた。




