クリステル=アディール 41
充分に魔力が、体中に行き渡ったので
重なった唇から逃れようと、身じろぎした。
それに気がついたウェル様は、
私の頬を押さえて口づけを続ける。
「ェ…ル…さま…」
僅かに口づけの隙間に、
名前を呼んで非難したが、
それすらも飲み込むように口づけが深くなる。
ウェル様の瞳を覗くと、青い瞳の中に
情欲がゆらりと浮かび上がっていた。
このままじゃ、いけない…
「んっ」
私はウェル様に流されないように、
自分の内側の頬を噛んだ。
そこから、少し血の味がしたのか
ウェル様は、唇を離した。
「殿下、少しやりすぎなのでは?」
ウェル様の後ろから、
イリヤ様の声が聞こえた。
「ああ、もう大丈夫そうだな。」
ウェル様に、支えられて起きあがると
心配そうに見ている、
メレイカ様とダスト様がいた。
その後ろで、むすっとしているライアー先輩。
ウェル様の横には、イリヤ様がにやっとして笑っている。
「ご心配おかけしました。」
私は一礼すると、ほっとしたのか
みんなの雰囲気が、和らいだようだった。
「完全に魔力がなくなると、体に悪影響を及ぼしますから。殿下に魔力を分けていただいて良かったですね。」
「ダスト様、申し訳ありません。研究で、訪れたのに足を引っ張ってしまいまして…」
「いえ、クリステル様が無事で良かったです。調査もできたことですし、そんなに気に病まなくても大丈夫ですよ。」
ダスト様は、にこりと微笑んでくださった。
隣でメレイカ様も頷いている。
「ライアー君から、いろいろと聞きましたよ。敵の罠にかかって危ない所でしたね。」
ライアー先輩は、
みんなにどこまで話したのだろうか…
まさかキスのことは、話していないだろう
と考え、私は相槌をうった。
「みんなー!僕の存在忘れていないかい?」
すぐ横にパックが、
ポカポカ私の腕を叩いている。
結界箱に入っていたはずだったが、
私の魔力が枯渇したため、
結界箱が保てなかったようだ。
「僕だって、お姉さんのこと心配したんだからねぇ!」
ごめんごめん、と頭を撫でてあげると
パックは嬉しそうに胸の所でゴロゴロとした。
「パックちゃんも、力を貸してくれたのよ。私の治癒魔法をクリステル様に囲むように助言してくれたのよ。そのおかけで、ひどくならずにすんだわ。」
パックは、うんうんと頷いた。
「僕ら妖精は、魔力を感じるのが得意だからね~。お姉さんの優しい魔力がどんどんなくなっていくのがわかったから、びっくりしちゃったよ。」
「パック、ありがとう。そうだ…!」
私は、横に置いてあったかばんを引き寄せ、
中からビスケットを取り出した。
ビスケットをパックに渡した。
「はい、助けてもらった対価です。」
パックは、口をへの字にしていたが
もらったビスケットをボリボリと食べ始めた。
「も~しょうがないなぁ。普通はもっと違う対価を要求するんだけど、これでよしにしとくとするよぉ~。」
食べ終わったパックは、
私の胸の中に潜ろうとしたところを
ウェル様に捕まえられた。
「だめだぞ、胸の中にはいっちゃ。」
また口をへの字にしたが、
ウェル様の言うとおり、
胸に入らずに私の肩の上に乗った。
「また、そいつ結界箱にいれたほうがよくないか?」
ライアー先輩が言うも、私は首を振った。
「助けてもらったんだもの、もう結界箱はつかいたくないわ。」
「じゃあ、そいつどうするんだ?」
パックを見つめると、張り切ったように手を上に上げた。
「僕、お姉さんのこと気に入ったからついていくことにしました!」
パックの言葉にびっくりしたが、
他の人の前では消えることができる
ということで、自由にさせることにした。
「パック、よろしくね。かわいい仲間ができて嬉しいわ。」
「こちらこそ、よろしくねぇ~♪」
ペコリとお辞儀する姿は、
すごい可愛くて私は嬉しくなった。




