クリステル=アディール 37
私は、暗闇へ落ちた時にみた夢の話をした。
「その夢は、小さいときにクリスが体験したことなのか?」
「ええ、現実に起こったことを、夢の中でまた体験したような状態だったわ。」
少し考え込んだ先輩は、
この魔法に心当たりがあるようだ。
「精神系の魔法は、かけられている人物が鍵となっている。鍵はおそらく、クリスだ。わざわざ過去の幻影を見せたのは、クリスの魔力を暴走させようとしたのかもしれない。」
魔力を暴走させる…
たしかに夢なのに魔力の渦を感じた気がした。
「クリスの魔力を使って、この空間を作りだしたのかもしれない。体にほとんど魔力が残っていないだろう?」
私は頷いて、ほとんど魔力がないことを伝えると
先輩はひとつ質問をした。
「クリスは、殿下のことをどう思っている?」
「え、急になんですか…」
「いいから、答えろ。」
先輩にじっと見つめられて、私はたじろいだ。
「私はウェル様と婚約しないために、ここまできたんです。」
お姉さまが婚約破棄したのに
私がウェル様と婚約なんてできるわけない。
前世を思い出した私は、なおさらその思いが強くなった…
だけど…
「ちがう。好きか、嫌いかだ。」
「…」
私は困惑した。
口を開いても、言葉が出てこないのだ。
嫌い…そう言えば解決する問題なのに…
先輩は、ため息をついてその先を促す。
「じゃあ、頷くだけでもいい。ウェールズ=エメラルダが嫌いで婚約したくないんだな?」
私は、先輩のいうがままに頷いた。
そのとたんに、私の体からごそっと力が抜ける感触がした。
なにこれ…




