クリステル=アディール 38
私の体の中から黒い蝶が一匹現れ、空を飛んだ。
蝶はひらひらと舞い、黒い壁の一部となった。
「なに、これ…。まさかここにいる蝶すべて、私の体から出てきたの…?」
「いまので魔力が少し減っただろう?この魔法は、嘘をつくと魔力が反転して自分を捕らえてしまう。昔、隣国で使用されていた魔法だ。まだ使える奴がいたんだな。」
体を巡る魔力が、さっきよりも減っていた。
でも、私はここにきてから嘘なんて…
あの夢、いえ…幻影でおこったこと。
魔力が暴走したときに、言った言葉を思い出す。
"そんなことない!
みんなにこわい思いはさせないわ。"
安心させたいがため、出た言葉だったけれど…
実際は、こわい思いをさせてしまうのではないかと
確信がもてなかった。
つまり、嘘と認定されたのだ。
幻影についた嘘や、魔力暴走の結果、
私の魔力を介して黒い蝶が、
たくさん作られてしまったということ…?
「どうすればいいの…」
自分にかけられたら魔法に戸惑った。
「これが、クリスの命と繋がってたらお手上げだった。だが、蝶がクリス魔力によるものだったから、大丈夫。この蝶達を焼き尽くすまでだ。」
私は先輩に、引き寄せられた。
魔力を分けろ、そう言って先輩は私に口づけした。
「んっ」
隙間なく重なった唇に、戸惑う私を
先輩の手が、頭の後ろにまわり、
優しく頭をさえられた。
自由に息ができなくて、少しだけ苦しい。
少し、息をしようと口を開くと
待っていたとばかりに
口づけが激しくなり、口内を熱いものに侵された。
苦しさに混じって、甘美な感触を感じ
頭の中は、先輩のことしか考えられなくなってしまった。
そして、激しい口づけの最中
私の中に少しだけ残っていた先輩の魔力が、
熱をすべて持っていかれた。




