クリステル=アディール 36
「ライアー先輩!」
嬉しくて思わず、先輩に抱きついた。
おいおい、といって先輩も抱き止めてくれた。
「こんなに抱きつくなら、もう一度キスするぞ。」
「えっ」
先輩は、私の顎を上にあげた。
「俺を呼んだってことは、キスしたことを思い出したんだろう?」
挑発的な目だった。すぐ目の前には、先輩の唇がある。
別れる前の唇の感触を思い出して、
恥ずかしくなり、体を離そうと、
先輩を押し返した。
この世界では、
キスは一般的な挨拶のようなものだった。
前世を思い出した私には、
慣れた行為ではないため、たじろいてしまう。
先輩は、くすっと笑い
離そうとする体に後ろから手を回して、ぎゅっとした。
「待ってろって、言ったろ。」
さっきよりも熱い抱擁で、少し不安が和らいだ。
私は身体を離して、にっこりと笑った。
先輩の笑顔は、心臓に悪いぐらいドキドキした。
「来てくれて、ありがとうございます。みんなは大丈夫ですか?」
「安心しろ、みんな無事だ。」
っと言って、状況を説明してくれた。
ここは、私の精神世界らしく
先輩も意識だけ私の中に入り込んだらしい。
キスによって、先輩の魔力を私の中に流し込み、
転送魔法を発動させたらしい。
魔力が、発動するきっかけは…先輩の名前だった。
「クリスが倒れてから、襲撃者は消えた。いったん、みんなは安全なところで待機している。」
「じゃあ、早くみんなの元に行かないと。また襲撃者がくるかもしれないわ。」
私は、はやる心を抑えつつ、ライアー先輩に促す。
ライアー先輩は、首を振って私を落ち着かせた。
「落ち着け、まずはここの状況を教えてくれ。」




