クリステル=アディール 32
少し歩くと木々の途切れ目に差し掛かかり、
不審な影を見つけた。
木の影と重なって見えるそれは、
人の形をした影だった。
上を見上げて目を凝らした。
木の上に誰かいるみたい…
私の目線に気づいたライアー先輩が
矢に似せた炎を、人影に向かって放った。
燃え盛る炎は、人影ごと包んで
やがて空中で分散した。
「こんなところでイチャイチャするな。」
ライアー先輩が、私の隣に移動してきた。
隣に、風の魔法を纏った金色の髪の王子ウェル様。
反対側には、
炎の剣を統べる赤茶の髪の騎士見習いのライアー先輩。
敵を倒した今、心強い二人に挟まれて
すこし安心したと同時に、
かっこいい2人に挟まれて不覚にも、ドキドキしてしまった。
こんな緊迫した状況なのに
こんなこと思うなんて…
もっと、しっかりしないと!
自分にできることをやるって
さっき誓ったばかりなのに…
自分を叱責して、辺りを警戒すると
不自然な欠片を見つけた。
犯人が落としたものかもしれないと思い
持ってきた袋にいれようと
手に取ってみると、蝶の欠片だった。
それにしても、珍しい色の欠片だわ。
羽の部分が虹色の模様がついていた。
「おい、これをみろ!」
ウェル様の護衛のイリヤ様が示した先に
先ほど先輩が燃やした欠片があった。
焼け落ちた形跡を見ると、蝶の死骸の塊だった。
「襲撃者は、まだ死んでないぞ!」
っという言葉を聞いた瞬間に、
虹色の蝶の羽が光輝いた。
「クリス!」
ウェル様と繋いでる手の感覚がなくなっていく…
どうしよう、他の感覚もなくなっていくみたい。
すごく瞼も重くなってきた。
目が閉じかけた瞬間、ライアー先輩が私の腰を引き寄せ
唇に熱いものが押しつけられた。
閉じかけた目を微かに開くと、私の唇と先輩のが重なっていた。
「んっ」
口を開かされ、熱いものが流れ込む。
体に力がはいらず、先輩にもたれかかっている。
やっと唇を離されたときは、私が暗闇に落ちたときだった。
「待ってろ、すぐ追いつく。」
ライアー先輩の声が、どこか遠いところで聞こえた気がした。




