クリステル=アディール 30
話終えた、メレイカ様は
落ち着いた様子で私に問いかけた。
「ね、面白いおとぎ話でしょ?国を捨てた聖女がわるいのか、無理やり婚約した王様が悪いのか…クリステル様はどっちだと思う?」
私は、少し考えてメレイカ様を正面からみた。
「誰もが本当の気持ちを伝えてきれてない…中途半端な印象を受けました。王様が願ったのは、願いというより呪いのようだなっと…」
私が言い終えると、くすりとメレイカ様は笑った。
「その答えって、そのままクリステル様にも当てはまると思うわ。クリステル様も本当の気持ちを常に伝えているのかしら?あなたのその考え方は、少し傲慢だと思うけど…」
私は言われて、はっとした。
メレイカ様のいうことは、もっともだった。
自分の前世を思い出してから、私は孤独だった。
誰も本当の私のことがわからない、
言っても理解してもらえないと
思い込んでいた…
ウィル様の思いに逃げている自分は
本来、私のなりたかった姿なのかしら?
ただ、前世の記憶に逃げているのでは…
なにも変わらないかもしれない。
もう一度私らしく生きたいと思った。
前世の記憶を含めての私を、きちんとみんなにみせたい!
私の中の自分に誇れるように…
「ありがとうございます。メレイカ様は優しいですね。私に気づかせてくれたんですよね。」
「お礼をするのは、まだ早いわよ。私は、クリステル様を利用する気なんですから。」
メレイカ様は、私にまかしてくれるらしい。
ただ答えをもらってばかりは、だめ。
何かしら役にたたないと…
しゃきっと背伸びをした。
そして、いままでの話を整理しよう。
メレイカ様のおとぎ話は、現在に通じるものがあった。
(血の刻印)
ライアー先輩の育ててくれたお母様は
エメラルダ出身だといっていた。
他国で出産した際に、亡くなってしまった。
自国では100%安全で、亡くなることはない…
あの毒花を思い出す。
他の花たちが咲き誇るために、ひとつに花に毒素を集めているのだとしたら…
「この国を安全に保つため、他の国に、危険を分散させている…?」
でも、それを他国が許すというはずがない。
「そして、その信念を邪魔されないように(血の結界)で他者をこばんでるんだわ。妖精と契約するには、対価がいる。10代目の王様は、自分の大切な気持ちを対価として、血の結界を妖精に作ってもらった。妖精を見なかったら、ほんのおとぎ話だと信じてしまったかもしれない。でも今は、妖精のパックや、スミス様やアリス様が愛する人の気持ちをささげた前例をみてしまった。妖精は人間の大事な気持ちを対価として、いまでも取引をしているのね。」
メレイカ様は、にっこり笑った。
ここまで、私を導いてくれたメレイカ様…
「メレイカ様の目的はなんですか?みんな妖精と契約してまで求めるものってなんでしょう…」
私は、目を手で隠した。
なくしてしまった人たちの気持ちを思うと
涙がこぼれそうになった。
メレイカは、クリステルの手を重ねて、
温かい光でクリステルを包んだ。
この光のお陰か、心と体が軽くなった気がした。
「これは、癒やしの魔法ですか・・・?メレイカ様は、おとぎ話にでてきた聖女様みたいですね。」
メレイカ様は、口元に指を当てた。
まるで、内緒だよって言っているみたい。
この瞬間、バラバラになっていたピースは、
それぞれ繋がっていたのかもしれない。
私がこの世界に転生したことにも、
意味があるのかもしれない。
初めてそう思った。
そう決意したとたんに、ふわりと蝶が舞うのを感じた。
目の前に蝶がひらひらと舞っている。
何匹も、何匹も、連なり始めた。
森の奥の方から、飛んできているみたいだ。
私は奥に視線を向けると、メレイカ様の手で私の目を隠した。
「クリステル様。見てはいけない。」
低い声での忠告に、私は全身を固まらせた。
「この蝶は幻覚よ。近くに敵がいる。」
メレイカ様は、すぐにダスト様に合図をした。
緊縛した状況の中、
背後にライアー先輩と殿下、イリヤ様が追いついた。
「まずいよぉ〜結構な強さだよぉ。君達のかつての仲間だったものたちがやってくるよぉ。」
パックの気が抜けた声を合図にして、戦闘がはじまった。




