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エメラルダの卵  作者: 佐藤 綾
30/74

クリステル=アディール 25

とても静かな森の中で、

お姫様だっこされながら歩かれるのは耐えられず

私は口を開いた。


「ライアー先輩の家族ってどんな人ですか?」

先輩がちらりと私をみた。

「手紙にも書いただろう。」

「手紙には、家族構成しか書いてありませんでした。母、父、弟しか…」


頬をぷくっと膨らますと、先輩はふぅっと息をはいた。

「母が出産時に危険な状態になり、そのまま母と弟は亡くなった。父は、母が亡くなったときにいなくなった。二人が亡くなったのが耐えられなかったんだろう。まぁ、父母と言っても、俺とは血は繋がっていないからな。俺は、攫われた子供なんだ。」


「えっ…どういうことですか?」

私はびっくりした。

先輩は、頭でコツンとつっついた。

「ほらな、そんな顔されるのが嫌だったんだ。この国で産まれたが、小さい時に隣国のやつに誘拐されたんだ。」

「そんな…!」


そんな騒ぐほどのことじゃないぞ。っと先輩は言う。

この国で誘拐は珍しくないことらしい。

誘拐後、同じ国出身の養母に出会い、育ててくれたらしいが、養母が亡くなって、本当の親を探しにこの国を訪ねることにしたという…。

「本当の両親は見つかりましたか?」


「ああ、でも俺のことは覚えてなかった。でもそのおかげで、ここに帰ってこれたのかもしれないな。どうせ、お前らがなんかしたんだろ?」

ライアー先輩は、パックを睨みつけた。


パックはびくっと体を震わすと、やれやれとしたポーズをとった。

「失礼しちゃうなぁ。僕ら妖精は、人の願いを叶えるだけなのに…。君の両親のことも覚えているよ。息子を助ける対価に、両親の大事な記憶をもらったからね。」


え…どういうこと?


「お前があのときの妖精か?」

パックは首を振った。

「それは、違う妖精だよぉ〜。妖精はね、願いを叶えた人の知識を共有できるんだよ。君は、両親の願いと引き換えに、この国まで辿りつけたし、この森の中を自由に動くことができる。普通の人だったら、この国にも入れず、森を永遠に彷徨ってしまうだろうさ。」

え、それって私だけだったらやばかったってこと…

情報が増えすぎて、頭がこんがらがっちゃうわ。


「つまり、妖精は対価さえ払えばなんでも聞いてくれるってこと?」

「うん、そうだよ〜!僕たち妖精は人間のことが大好きなんだ。対価さえいただければ、なんでも答えるよ!」

パックはくるくる踊りだした。


「おい、こいつに惑わされるなよ。お前が払える対価なんてないんだからな。」

「嘘つかないでほしいなぁ。お姉さんには、いろんな対価が見え隠れしている〜。もし、対価をくれるときは僕にいってほしいなぁ。僕がんばっちゃうからさ。」

私は、ひやりとした。妖精は、対価がみえると言っているのだ。

つまり、その人の大切なものがわかるのかしら…。


「ライアー先輩の話で、疑問に思ったことを聞いてもいいですか?」

「ああ、なんだ。」


「この国では、子供は100%安産で産まれるのに、どうして先輩の養母と弟さんは、亡くなってしまったのでしょうか。資料をもらっときにも思ったんですが…」

ふいに、ライアー先輩は、立ち止まって私を地面に下ろした。


「どうしたんですか?」

「おい、考えるのは後だ。サイレントベアの縄張りに入った。」

ライアー先輩の体が金色に光り、体から剣をぬいた。

剣先が、炎に包まれている。


「そろそろ、きちゃうよぉ~!話してて、気づくのが遅れたね?そこら中に、縄張りの証があったのにぃ~!」

パックが叫んだ。

周りを見ると、木には三本のひっかき傷があり、木の後ろになにかがいた。

のっそりとした大きな体格には、金と銀の毛がふさふさと生えている。

爪は、なにもかも引き裂けるぐらいに大きかった。


「これは、く、くま・・・!?」


呼んだ瞬間、すさまじい咆哮をあげた。


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