クリステル=アディール 23
愛しいあの人と、会社帰りにコーヒーショップで待ち合わせをした日だった。
「結婚しよう。」
夜景がきれいなレストランでもなく、
有名でもなんでもないコーヒーショップで
私はプロポーズされていた。
「君を大切にする。」
そう言って私の手をとり、
白いムーンストーンの指輪をはめてくれた。
彼の飾らない所が好きだった。
だけど、プロポーズぐらい素敵な場所でしてほしかった。
そう言うと、少し困った顔をしてごめんって謝られた。
彼と付き合い始めたのは、金融会社に勤めて1年たったぐらいだ。
たまたま参加した会社の飲み会に、
彼が参加していてその時に知り合った。
元々は会社の社員だったらしいが、転職をしていたため
私とは初対面だった。
彼から職場の昔ばなしを聞くうちに、打ち解けていき、
新人の私を応援してくれた。
そのうち、彼の転職先の苦労話などもされ
一緒にいるうちに、いつのまにか付き合うことになった。
付き合って7年がたつから、
そろそろ結婚かなっと考えていた時期だった。
私は、彼の手を握り、
よろしくお願いしますと言った。
これからのことを決めるため、
その翌週に大きな交差点の銅像の前で彼と待ち合わせをした。
そこへ、彼ではなく…
見知らぬ女が私の前に立ちはだかった。
女は、私のことを睨みつけて、
鞄から光るものを出して私に言った。
「夫は渡さないから!」
光るものが、私に向かって近づいてくる。
女と私の間には、なにも障害物はなかった。
私は、不意に目を閉じた。その瞬間を待ったのだ。
やめて!そこから先は見せないで!
そう願ったとたん、視界が暗転した。




