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エメラルダの卵  作者: 佐藤 綾
24/74

フィン=バレンタイン(幼なじみ)

ナターシャ=アディール様に

恋をしている。というと、

みんなして諦めろという…


ナターシャ様は、きれいな星空のような髪に

透き通るような白い肌。

クリスのが、美しいと言われているけど

僕には、ナターシャ様が

儚げな月の女神のような美しさの方が、好きだ。


僕とクリスは、同じ年齢ということで

よくアディール家に遊びにいった。


遊びに行くと、ナターシャ様がひとりで

読書なさっていることが多かった。

「クリステルは、殿下と庭にいるのよ。もう少しまってね。」

そう言ったナターシャ様の

寂しそうな横顔をみて胸がクシャッとした。


ナターシャ様を、寂しい気持ちにしないように

楽しめる話を用意して、訪ねることにした。

魔法の練習で失敗したことや

読んだ本についての感想だったり 

他愛もない話だけど、ナターシャ様は微笑んでくださった。

僕といるときだけでも、寂しさなんて忘れて欲しかったんだ。


何度か遊びにいった帰りに、僕は提案をした。

「ナターシャ様、殿下との婚約を解消して僕と婚約しませんか?」

ナターシャ様は、戸惑っていらしたが、

僕に笑顔をみせてくれた。

「ありがとう。その気持ちはとても嬉しいわ。でも、私は殿下をお慕いしているの。」


殿下のことを思って、頬を染めたナターシャ様はとても美しかった。

殿下の婚約者だからという理由で

断るのでなく、ありがとうってちゃんと気持ちを受け取ってくれたんだ。 

その言葉がすごく嬉しかった。


やがて僕は、クリスの婚約者候補にされた。

ナターシャ様は、妹の婚約者候補として

僕のことを扱うようになったけど

僕は気にせずに、ナターシャ様への好意は隠さなかった。


そのぶん、ナターシャ様と殿下のことだって応援した。

ナターシャ様が、殿下と釣り合いがとれるように

学業も、魔法の修練もがんばっていたのを聞いていたからだ。


「フィン、今度エリザベートの森へ行くことになりました。」

ナターシャ様は決意された目つきで、僕に言った。

二週間ほど、森で魔力を拡張させる修練をするそうだ。


おそらく、殿下のためだから僕が何を言おうと彼女はいくのだろう…

僕は、ナターシャ様の手をとり口づけた。

「体には、お気をつけてください。ナターシャ様を思っている僕のことを忘れぬように…」

周りからみれば、微笑ましい光景だったと思う。

ナターシャは弟のように、微笑んでくれた。


この時に、気づけばよかったのか…

気づいていたら、僕は止めることを選んだだろうか?

僕を選んでくれるかもしれない未来があるとしても…


やがて、ナターシャ様が森から帰宅したと同時に、

ナターシャ様と殿下が婚約を解消した。

そして、僕とクリスの婚約話もなくなった。


父上に訪ねると、最初から、殿下とクリスが

婚約することは、決まっていたそうだ。

ナターシャ様もそれを知っていたのだろうか…

僕も、ナターシャ様も仮初めの婚約者だったんだ。


ただそれだけで、ナターシャ様の気持ちが変わるなんておかしい。

僕は、意を決して尋ねることにした。


「美しいナターシャ様、僕と婚約しませんか?まだ殿下のことを慕っているのでしょうか?」

ナターシャ様は、あのときのように頬を染めたが、僕の言葉で戸惑っているようだった。

「フィンは、会うごとに、誉めるから恥ずかしいけど嬉しいわ。殿下のことは家同士のことだもの。殿下を慕っていた、ほんの少し前の私は何を夢みていたのかしらね…。」


なにかがおかしい。

直感的に感じたナターシャ様の異変。

あれほど、殿下を慕っていた様子が変わるなんて…


そのまま、ナターシャ様と別れ

アディール家当主、ロバート=アディール様のもとへ急いだ。


「失礼します。ロバート様、先ほどナターシャ様とお話したのですが、ナターシャ様はいったい…」

「フィン=バレンタイン!ナターシャのことは、知らない方が君のためだぞ。」

尋ねる前に、ロバート様に遮られた。

「婚約解消した今なら、ナターシャ様と君を婚約させることだってできる。婚約解消しても、ナターシャにはいろんな貴族から申し出がある。」

「それは…」

「その中でもバレンタイン家が我が家と並ぶぐらいの名門だ。それに、君に特別にやってもらいたい仕事があるんだ。」

ロバート様の様子だと、ナターシャ様のことをはなしてもらえないだろう…

僕は割り切り、頷いてロバート様の仕事を受けることにした。

仕事をうけるかわりとして、

ナターシャ様との婚約を約束させた。


仕事内容は、

学園で『クリステルを見張る』という、お目付役だ。

本当のところ、殿下と早く婚約してほしいのだろう。

クリスの学園での生活について、度々報告することとなった。


クリスは、学園にはいってから

魔力の器について調べ始めた。


それに僕も便乗することにした。

調べてはいけないって、仕事の約束にはないからね。


僕は、真実に少しでも近づけるように

研究所分室にいくように誘導したり

器の被害者に、

話を聞く機会を作った。

なんとなく、全貌が見えてきた気がする。


クリステルは、まだわかってないようだが

エリザベートの森にいけば

おのずとわかるだろう。

僕と君が知りたがっている真実を。


あれから、まだ僕とナターシャ様の関係は変わっていない。

ナターシャ様の気持ちが真っ更な状態になっただけだ。


僕はその心に色をつけたい。

絶対に忘れないナターシャ様を思う気持ちで……

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