after18
「ごめん。全部僕の力が足らなかったからだ」
「…ううん、浩人は…悪くない!誰のせいでも…ないよ」
「ごめん」
僕は唯にそう言葉を返す事しか出来なかった。
責められるはずなのに、唯は決して僕を非難しようとはしなかった。
「…これから、僕らは二人で生きていかなくちゃならない」
「浩人と…二人で」
「そう。けど僕は絶対に唯を守ってみせる。何があっても…ずっと一緒だよ」
「うん…浩人が居るなら…浩人となら…大丈夫」
それは微笑みと呼べるものだった。
唯は信じてくれている。
僕を。
だから…絶対に二人で生きるんだ。
僕は唯の手を握った。
「あったかい…ね」
「うん…これが、唯の温もりだね」
唯は力の入らない手ながらも、指先だけで力を籠めて握り返してくれた。
この温かさを僕は…ずっと守って行くんだ。
――この日を境に、僕らの新しい生活は、『始まった』んだ。
僕は来る日も来る日も、唯のリハビリの手伝いをした。
数年間動かなかった体はやはりすぐに戻るものではなく、徐々に慣らしていかなくてはならなかった。
まず最初に動かせるようになったのは腕と指だ。
数日もすれば指だけはちゃんと動かせるようになり、食べ物も自分で食べられるようになった。
僕は箸を使う彼女を見て初めて左利きだったという事を知った。
新たな発見だった。
どこかで助けが来ないかと、食料を調達するついでに色々と見回った。
けれどやはりそんな様子はない。
徐々に本当の夏と呼べる気候に変わってきたからか、町に戻ると鼻が曲がるような臭いが立ち込めている。
正直な話、息をするのも辛い状況だった。
マスクを付けてもほとんど意味はなかった。
亡くなった人たちの遺体をそのままにするのも気が引けたけど、今の僕には全員を埋葬する時間もない。
その時間を僕は唯のために使いたいのだ。
臭いや腐乱した人の姿なんて決して慣れる事なんてないけれど、あれだけ嘔吐していた体も今では耐性が付いたように、なんとか平然を保てている。
勿論平気という訳じゃない。
悲しい事だけれど人間って環境が劇的に変わったとしても、時間と共に適応していくんだなと思った。
けどそれも唯という存在が僕を強くさせてくれたせいなのかもしれない。
ただ先輩や家族が眠る場所にだけは、今はまだ近づく事が出来なかった。
…いずれは僕自身の手で埋葬してあげなければならない。




