after17
「唯…君の創った世界に紛れ込んだのはさ、唯一生き残っていた人間だけだったんだよ」
「え?それ…どういう事?」
「そのままの意味だ。僕らはこの惨事で瀕死の怪我を負ったり、意識を失ったりした。それが何かの弾みで君との世界と繋がったんだ」
「繋がった…」
「多分ね。あそこに来られなかった人は…すでに亡くなっていた。そういう事…だったんだと思う」
唯は僕の言葉を聞くと目を伏せた。
そして恐る恐る唇を開く。
「浩人…じゃあ…まみこちゃんは?山下さんは?先輩…は?」
「………………」
僕は静かに首を振った。
「そんな…」
「先輩は…まだ辛うじて生きていた。けど僕の力だけでは…どうにもならなかったんだ」
思い出すのも辛い。
あの別れが現実のものだとは思いたくはない。
「せん…ぱい」
「唯…君のせいじゃない」
「でも…こんな事になったのって…私がそう『願ったから』じゃないの!?」
僕は目を見開いた。
そんな馬鹿な事があるか。
「違う!唯のせいなんかじゃない!そんな責め方…良くないよ」
「でもっ…だったらどうして…」
「誰のせいでもないんだよ…。ただ…助かったのが僕と…唯だけって事だと…思う」
現実世界では唯は神様でも何でもないんだ。
こんな言葉は使いたくはない。
けどこれは…起こるべくして起こった…運命としか…言い様がない。
「私…現実に戻ったら、みんなと仲良く出来るって…そう思ってた。けど…こんなのって…私…まだ先輩と話…してないのに…」
「…………」
僕は床の上で強く拳を握った。
このやりきれなさは、どんな事をしようとも消える事なんてないだろう。
「先輩から、君に伝言がある」
「え?」
「済まなかった…って。先輩は自分のした事を悔いていた…」
「せんぱい…」
重苦しい空気が漂う。
けれど今この時に話しておかなければ、きっともう口に出せる機会はないだろう。
「けどね、先輩は悔いたまま…悔いたまま亡くなったんじゃない!唯、君に感謝の言葉も口にしていたよ…ありがとうって」
「…せん…ぱ…い」
初めて人と分かり合おうとした。
けれどもうそれは叶う事が永遠にない。機会すら失ったのだ。
唯は初めてであろう悲しみの涙を流した。
僕はタオルを取り出し頬を伝う涙を拭う。
小さく嗚咽を鳴らしながら泣く唯を、僕はそれが止むまで見守っていた。




