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after15







「いろんな事が…あったんだ」


「そう…みたいだね。どこも…壊れてる」


動けない体でも周囲を見るだけで分からないはずがない。

唯もこの事態は察知したらしく、多くは語らなかった。


「再会は喜ばしいものだけど、話さなきゃならない事もたくさんある…。けどこのままこの場所に置いては危険だね。どこか安全な場所に移動しなきゃ」


「でも私…動けない。自分の体じゃないみたいに…カチカチに固まってる…」


「それは筋肉の硬直だよ。四年間も寝たきりだったんだ、リハビリしていかないとすぐには歩く事も出来ないね」


僕はそう言って唯の背中を起こした。


「浩人?」


「ごめん、ここもいつ崩れないとも限らない。だからおぶって移動する」


「…うん」


指先程度しか動かせない彼女をおぶる行為すら難しいものだったけど、なんとか背に乗せる。


「…重く…ない?」


「大丈夫だよ、全然平気さ」


嘘ではなく本当に軽かった。

痩せ細った腕と足。

抱えている足は薄いパジャマ越しとはいえその細さが尋常ではなかった。

長い間点滴だけで過ごしていたのは分かるけど、まともな食事を今までしてこなかったというのがよく分かる。

腰の部分すらまともに曲げられないからか抱えるのにも一苦労だったけれど、自分が背を曲げる事でバランスは取れた。

僕はすぐに瓦礫で出来た空間から出る。

ようやく浴びた陽射しに、唯は目を細めた。


「眩しい…太陽」


「本物の陽に当たるのは四年振りだもんね。慣れるまでは無理に目を開けちゃ駄目だよ?」


「うん、そうする」


そう答えた唯の言葉は、どこか抑揚のある声だった。

僕の肩に頭を預け目を瞑る。

こんな状況だというのに彼女のその顔は嬉しそうだった。


それから会話をする事もなく僕らは公園へと向かう。

ただただ唯は僕の背中で揺られ、気持ち良さそうに風を感じている。

唯は…変わったのだろうか?

あの臆病だった雰囲気は感じられない。

この凄まじい景色を見ても動じた様子もない。

…これまで彼女が見てきた世界は、これよりも酷かったというのだろうか。


公園。いや、公園であるべき場所と言ったほうが適切なのだろう。

そこは今まで見てきた面影はなく、切り揃えられた木々は無残に倒れ、生え揃っていた芝は抉れていた。

舗装された遊歩道も亀裂が生じ、美しかった形は見る影もない。

僕はその中でも無事と言える芝を見つけ、その上に彼女を下ろした。

丘のようになっている場所なため、頭を起こしているような格好で唯を寝かせられるのは好都合だった。


「ごめんね浩人、私が動けないばっかりに」


「ううん、いいんだよ。これからゆっくりと体を戻して行こう」


風が運ぶ臭いに不快なものは混じってはいない。

ここは生活するにも一番良い場所とも思えた。


「ここで少し待っていてくれないかな?」


「どこかへ行く…の?」


寂しそうな視線で訴えかける唯。

だけどどうしても行かなければならない用がある。


「どこかでテントや生活用品を探してくるよ。そうじゃなきゃこの先大変だからね」


「そっか…そうだね」


唯は妙に物分りが良かった。

…ちゃんと現状は理解してくれているのだろうか。

けど陽が暮れる前にやっておかなければならない。

僕は話したい衝動を振り払う。


「なるべく早く戻ってくる。動けない体で不憫かもしれないけど、我慢出来るかい?」


「うん…大丈夫。待ってる」


「ありがとう。じゃあすぐにでも行って来る」


僕は羽織っていた上着を彼女に掛けた。


「この季節でも夜は冷えてくる場合もあるからね」


「ありがとう浩人。気を…付けて」


「うん」


僕は視線だけの見送りを受け、すぐにその場から駆け出した。

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