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after13


「ぐう…うおおおおおお!!」


ピンと張り詰めるロープ。

けれど壁はやはりびくともしなかった。

綱引きのように体全体を地面に倒すように力を加えてみたが、少しも動く気配がない。

動くのは踏ん張っている自分の足だけだ。

力を加えれば加えるほどその足は地を噛むことなく、コンクリの塊へと引き寄せられて行く。

やがて僕の手のひらは擦り切れ、血を滲ませた。

重さにして何キロあるのだろうか。

やはり人の手じゃ無理なのか…。


「唯…ごめんね。でも…絶対なんとかする」


「………い」


「ああ、大丈夫!」


とは言ったものの、どうすればいいのだろう。

泣き言なんて言いたくなかったけれど、他に手立てが見つからなかった。

崩れないという保障もない。


焦りと不安で機転が利かない。

あんなものをどうすれば僕一人で動かせるのだろうか…。


「…あ」


宛てもなくフラフラと足を運んでいた僕の視界に、一つの人影が映った。

それは当然亡くなった人の姿だった。

ベットから上半身を床に崩れさせ、突き出した鉄骨が背中だけを押し上げた格好をしている。

ただ僕はその亡骸を見て吐く事はなかった。

何故ならその顔には見覚えがあったから…。


「山下さん…」


そう、それは山下さんだった。

みんなどの人も苦痛や絶望に塗れた顔をしてこの世を去っていった。

この世界で意識が芽生えていたのかは僕にも分からない。

けれど山下さんのその顔は笑っていた。

とても幸せそうな表情をしていたんだ。


「こんな顔が出来るなんて…」


あの世界で満たされた山下さんは、本当に幸せだったんだろう。

それを物語るには十分な顔をしていた。


けど僕はその山下さんの笑顔で教えられた気がする。

絶望なんかに負けるな!ってまるで励ましてくれているような気がした。


「山下さんが言ってくれた言葉…僕は忘れません。強くなります…僕は」


最後にその亡骸に向かって一礼をした。

ありがとうございます…山下さん。

僕は再び駆け出した。








余裕を持て。

そうだよね、山下さん。

僕が取り乱したり絶望してたりなんてしたら、誰が唯を救ってくれると言うんだ。

諦めたらそこで終わり。

こんな世界に負けるな!

先輩は言ってくれた。

だったら笑顔だけは忘れないようにしよう。

諦めないよ。みんなが…僕の背中を押してくれる。

悲しくても今は…笑っていよう。


僕は再び駐輪場跡へと向かった。

冷静になってみて、一つ案が浮かんだからだ。

そこには自転車の他にバイクや原付なども多数転がっていた。

僕は原付に目星を付けて調べていく。

その中で一つ、キーが付いたままのものを発見した。


「原付なら僕でも動かせる。これで…行けるか」


原付を起こしキーを捻る。

エンジンボタンを押しアクセルを捻ると、それは唸りを上げて稼動し始めた。


「よし、大丈夫!動く!」


僕は動作を確認すると急いで唯の元へと戻った。

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