after12
「唯!!」
「…ろと」
そこに彼女は居た!
体中が煤や埃で汚れてはいるが、ベッドに寝ている姿は無傷で無事のように思える。
彼女が居る場所には、倒れた壁が奇跡的に折り重なって彼女を避けている格好になっていた。
「唯!唯っ!!」
「た……よ」
「声が出せないのか?」
彼女は僕の問いに静かに頷いた。
砂や埃などで喉がやられてしまったのだろうか、僕は水が入ったペットボトルを手に彼女に渡そうとする。
が、それを彼女は受け取らなかった。
「どうしたの?水…要らないのかい?」
「か…が……い」
「え?」
「…か……ない」
体が動かない。
そう伝えるような唇の動きだった。
その言葉で僕は一瞬焦りを浮かべたが、考えてみれば唯は四年もの間ずっと寝たきりだったんだ…。
これは怪我ではなく筋肉の硬直によるものだろう。
「大丈夫!今体が動かないのは仕方がないんだ。じっとしてて、今から助ける!」
僕の言葉に安心したのか唯は静かに頷いてくれた。
よし…なら早いところこの瓦礫をどけないと…!
僕と唯の間には崩れた壁の一部が倒れ、侵入を塞ぐ様に邪魔をしている。
それはかなり大きいものだった。
僕の背丈よりも大きく、そして両手を広げても余るほどの幅。
けれどすぐ手の届く場所に唯はいる。
こんなところで戸惑っている暇はない。
先輩の二の舞だけには…してはならないんだ。
「ぐ…ぐぬうううぅ…っ!!」
僕がどう力を加えようともそれはびくともしなかった。
押せど引けど、立ちはだかる壁は微動だにしない。
こんな有様ではまともに力なんて伝わり様がない。
たった一枚の壁…これをどければ唯に手が届くというのに。
「はぁ…はぁ…。くそッ!どうしたらいいんだ」
「…い……で」
「え?」
「む……な……で」
無理しないで――。
僕の必死な顔を見て心配したのか、唯は少しばかり不安の色を見せていた。
「大丈夫だよ。絶対なんとかするから!」
僕はすぐに笑顔を作った。
けど実際、この壁を何とかする方法を見つけなくてはならない。
折角逢えたのに…このままじゃ埒が明かない。
考えろ。
僕の力だけじゃこのコンクリの塊は動かせそうにない。
「唯…不安だろうけど少し待ってて!こいつをどける方法を探してくる!…心配しないで、すぐ戻ってくるから」
僕はそう伝える。
唯は自分も心配かけまいと、笑顔で応えてくれた。
そうさ、一刻も早く唯を助けるんだ。
「何か…何か方法はないのか」
僕はその場を離れ、何か道具がないかを探す事にした。
病院の敷地内にそんなものがあるとは思えなかったが、駐輪場跡にロープを見つける。
「これであの塊を括れば…」
ロープを手に取り確かめる。
痛んだ様子もなくしっかりとしたものだ。
これなら使える!
僕はすぐに唯の元へ戻った。
僕は石の塊にロープを巻く。
隙間から裏を通し、なんとか全体を何重かに巻く事に成功した。
僕はそのロープを腕に巻き、思い切り引っ張った。




