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after6


「先…輩」


瀬上先輩。

彼は瓦礫の下敷きになっていた。

体がアパートの残骸に埋もれ、目で見える範囲は限られている。

その瓦礫の隙間から覗く姿。

見えるのは上半身だけで、他部位は残骸の山で埋もれ確認する事も不可能だ。


「先輩!しっかりしてください!!」


僕は弾かれたように駆け寄り、瓦礫を掻き分け先輩の元へ近づく。

意識があるのか確かめようとすると、弱々しくではあるが胸が規則的に起伏していた。


「よかった…先輩。無事だった…」


しかし状況は切迫している。

先輩は呼びかけに気付いていないのか、苦しそうに呻いているだけだ。


「先輩…!大丈夫ですか!しっかり…しっかりしてください!」


僕は呼びかけを止めない。

大きな瓦礫が邪魔をして手がなんとか届く位置までしか行けなかったが、それでも僕の声くらいは届く。

必死で呼び続けた。


「…ぅ…あ」


目はまともに開けられない様子だったけど、小さく唇が動いき声を発した。


「先輩…」


僕から見える位置では頭と胴しか見えない。

瓦礫に埋もれた空間では暗くてそれ以上確認する事は出来なかった。


「…と…か」


「そうですよ!僕です!浩人です!!」


「…はは…浩…人。…マジ…かよ」


僕の存在に気付いてくれたようだ。

やはりあの世界で起きた事は現実だったと、自分の名を呼んだ事がそれを証明した。

現実で会うのはこれが初めてなはずなのに、不思議な感覚だった。


「来て…くれたん…だな」


「はい!勿論ですよ!体は…大丈夫ですか!?今…どんな状態ですか!?」


口調から察するに、喋るのも相当辛いのだろう。

けれど確認しなくてはそれこそ何も出来ない。


「…………だ」


「はい?…すみません、良く聞き取れませんでした」


「…………だ…よ」


僕はようやく届いたその言葉に体が硬直する。


無理だよ――。


「そんな…しっかりしてください!諦めるなんて…先輩らしく…ない!」


「…もう…体を動かす事…すら…でき…ねー」


苦痛が襲ってきたのか、先輩の表情は目を覆いたくなるほど醜く歪んだ。

目を凝らして良く見れば、先輩に倒れ掛かっている大きな木材が下半身近くに乗り掛かり、腹部を圧迫していた。


「…うぐ…ッ…」


どうすればいい!?どうしたら…先輩を助けられる!?

考えろ…考えるんだ!

この状況下で、僕が助けられる方法を…。

先輩は瓦礫が折り重なって出来た空間に居たために一命を取り留めた様子だった。

けれど少しでも付加を加えればこの空間など一瞬で倒壊してしまう危険性もある。


「…離れろ…よ。…お前…まで…埋まっち…まうぞ…」


「僕は…先輩を見捨ててなんていけません…」


「…はは…お前は…やっぱ…優しいな」


辛いだろうに、先輩は口元に笑みを浮かべた。


「足は…足は動かせませんか?僕からは見えません」


「…無理だ。動…かせる…が引っかかって…膝を立てるこ…とも…できん。…力も…入らん」


「くそっ!どうしたらいいんだ…!」


僕は怒りを露にし、このやるせなさを吐き出した。

無理に引っ張り出せば建物が完全に倒壊して下敷きになってしまう。

僕が今体を支えるために触れている木材だって、いつその重みで崩れてもおかしくない状況。

先輩の体も弱り、このままでは助からない…。

無理に引っ張り出せたとしても、先輩の体で引っかかっているという残骸が崩れない保障もない。

先輩が居る空間は絶妙なバランスで力の均衡が保たれているように見える。

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