after4
助けも来ない。
人っ子一人居ない。
これが意味するのはみんな死に絶えた事を意味するんだろう。
瓦礫が積み重なって出来た山はさながら墓標だ。
ほとんどの人間がその下敷きとなり、亡骸となって眠っている。
それは僕らが眠っている間に起きた事。
ほとんどの人間が気付く事なく、その命を散らしたと思える。
この光景は想像上で語られた地獄なんてものとは到底比較出来るものじゃない。
自分の他に存在するのは無機質な散らばる物質と、死の臭いを運ぶ風だけ。
震災・テロ・核。
想像するべき単語は幾らでも浮かぶ。
この惨事の光景から何が起こったかを想定するなんて不可能だ。
何をどうしたらここまで破壊の限りを尽くしたような事になるのだろうか。
眠っている間に何が起きた…行われたのか、確かめる術はない。
しかし真夜中とはいえ無傷で生き延びた人間は本当に一人も居ないのか?と、考えてしまう。
何故…僕らはこんな出来事があったのにも関わらず、目覚める事が出来なかったのか…。
それほどまでに一瞬の出来事だったというのか。
もしくは一瞬で気を失うほどの何かがあったというのか。
仮に答えを知ったとしても、それが何になると言うのだろう…。
失ったものはもう取り戻せない。
一人ぼっちになった自分。
この先見えているのは皆と同じ『死』でしかないのだろうか。
「…一人…ぼっち」
この広大な世界で、これから一人生きて行けと言うのか。
神というものが存在するなら、これはあまりにも無慈悲だ。
「…ひと…り?」
何気なしに呟いた一言。
その違和感に僕は言葉を失った。
そして気付く。
「なん…で、忘れていたん…だ」
今、ようやく思い出す。
あの『世界』での出来事を。
あれは…夢なんかじゃ…ない!
「唯!」
僕はその名を呼んだ。
そうだ…あれは夢なんかじゃない。
彼女は…きっと、僕を待っている。
「あれは…夢なんかじゃない…よな。覚えてる…僕は覚えているんだ!」
一つ一つ、あれは現実に起こった出来事だと噛み締めるように単語を呟いていく。
彼女が創った世界。
あそこで僕らは確かに数日間過ごしていた。
その記憶は…確かだ。
「そう…いう事…だったのか」
一瞬熱り立ったが、僕はすぐにその場に座り込んだ。
唯が創った世界。
あそこで人が限定された意味。
因果なんてものを知る事なんて僕には出来ない。
けれど、あそこで人が居ない理由にはちゃんと意味があったんだと今思った…。
唯が創った世界に僕らは迷い込んだ。
けどそれは選ばれた極僅かな人間だけ。
それは…生き延びた人間だったって事…なのか?
この状況で瀕死なり気絶なり運良く生き延びれた人間だけが、彼女の世界に意識だけ迷い込んだ。
どうしてそうなったのか、理由なんて誰にも分からない。
同時刻に多くの人間が死に、生き延びた人間も死の淵に立たされた。
それが何かの因果で彼女の世界と繋がった。
「という事は…まだみんな生きてる!生きてるんだ!あの世界に居た人たちは!」
希望が見えた気がした。
夢でも現実でも、そのどちらも事実は同じだった。
あの世界で過ごした時間も、現実では同じように流れていたのだろう。
今正確な時間や日付を知る術はない。
携帯などが壊れていないのならばそれを知る事は叶うだろうが、今更探しに帰るのも気が引けた。
…家族が眠るあの場所に近づく事は、僕にとっては悲しみを生むだけだ。
「僕らがあの世界で目覚めた場所に、みんなが居る…」
現実世界とのリンク。
皆が目覚めた場所というのを僕は『知って』いる。




