after3
ここは終わってしまった世界なのだろうか?
どこからが夢でどこからが現実なのか?
曖昧。
一面に広がる瓦礫の山と立ち上る黒煙。
辺りは酷い臭いが散漫し、風が無邪気にそれを運ぶ。
見渡す景色に大きな遮蔽物なんて存在しなかった。
ひとたび瓦礫の山に立てばどこを見渡しても地平線が存在し、残骸の山が幾つもそこにある。
遠くに見える山は削れ地肌を晒し、歪な格好をしていた。
大地はひび割れ幾つもの大きな亀裂を発し、道だった場所はただ砂利と崩れた何かで埋め尽くされている。
崩れたコンクリートの残骸。潰れた車や自転車。倒れた木々。
所々で立ち上る黒煙は、空に向かって無数に伸びている。
様々な物の破片が地面に散らばり不明瞭な色彩を帯びる。
それはもう迷彩と呼べるもので、それは自分の視覚を惑わせていた。
簡単に言葉で表すなら、まるで戦争跡と呼べるものだ。
ここはもう『町』ではない。
かつて『町』だった何か、だ。
僕は立ち尽くしていた。
自分の家だったはずの残骸の山で。
「……………」
何を考えればいい。
何をどうすればいい。
端から考える気なんてないと自分でも分かっている。
けど僕の頭はどうしてもその答えを知りたかった。
胃がキリキリと痛む。
あれから何度嘔吐を繰り返しただろうか。
出るものなど最初からないと分かっているはずなのに、それでも僕の体は何かを吐き出そうと胃と喉を苦しめた。
カラカラに渇いた喉は胃酸で焼け、叫び続けて潰れかけた状態で、満足に声を出す事も出来ない。
漂うこの酷い臭い。
夏が近いために腐敗が早いのだろう。
見るも無残な肉親たちの姿に、僕はただ無言で涙を流すしかなかった。
何が起こったかなんて考えるだけ馬鹿らしいのかもしれない。
この町は…もう死んでしまった。
いや、この町だけじゃない。
多分、国規模でこれは起きたんだ…。
僕は重たい足を引きずり、自宅だったはずの場所から離れた。
どこを見渡しても瓦礫の山。
それはどれだけ足を進めても変わる事のない景色。
始まりもなければ終わりもない。
延々と続く風景。
やがて僕は足を止めた。
見慣れたはずのコンクリートで作られた駐車場。
そこは割れたガラスの破片が散乱し、色んな物が散らばって落ちていた。
地割れでもしたかのように、地面にも亀裂が幾つも走っている。
僕は転がっていた一本のペットボトルを手に取った。
中身は無事のようだ。
透明な液体が容器の中で踊っている。
僕は蓋を開けると渇いた喉に水を一気に流し込んだ。
決して生きた心地はしていない。
けど水を得た事によって、少しは気分も落ち着き生き返った気分になった。
焼け付いた喉に染み渡るような痛みも今では心地良い。
僕は渇きから逃れようと満足するまで水分を口に含む。
唇から顎先へと溢れる水。
いつしかそれは目からも同様に流れ落ちていた。
「…うう…う」
どれだけそんな水分を涙腺から流そうとも、悲しみというものは消えなかった。
それはとめどなく溢れてくる。
力なくへたり込み、気付けば握っていたペットボトルはグシャグシャに潰れていた。
僕は落ちていたガラスの破片を拾い、鏡にして自分の顔を見てみる。
酷い顔だった。
煤だらけで真っ黒になり、目の下には隈が色濃く浮き上がっている。
生きていながら死んでいる人間のような顔だった。
「…なんでだよ。なんでこんな事になったんだ…。誰が…何をした?」
ふと視線を建物があった場所へと向けると、瓦礫で下敷きになったヒトの姿が見えた。
それは見るに耐えないものだった。
そして、また僕は嘔吐した。




