after2
痛みは酷いけど骨もどこも折れてはいないようだった。
じゃあ父さんは!?母さんは!?妹の美佳は!?
震える腕。
それでも何とか力を奮い、なんとか四つんばいとなって起き上がる事が出来た。
(あれ…は…?)
頭を上げ視線を正面に向けると、奥の瓦礫の隙間から何か白いものが見えていた。
それはぶらりと力なく垂れ下がっている。
五本ある細長いものからは、黒くなって乾ききった液体が付着し固形化していた。
それはもう、動く気配がなかった。
臭いはそこから立ち込めている。
(そん…な…!う…っ)
急に込み上げて来るものを抑える事が出来なかった。
出るはずがない。
だって何も口にしていないはずなのだから。
けれどそれは抗う事なんて無駄だった。
胃と喉がびくびくと痙攣し、何かを必死に搾り出そうと僕の口は開く。
「…か…はっ…!!…う…ぁ…ぁ!!」
痛い。喉が焼けるように熱い。
腹と背中がくっ付いてしまうと思えるほどの無意識なる力が僕の腹筋を動かす。
目からは辛いと信号を出すように、涙が溢れ出た。
(…なんだ…なんだ…よこれ…!!)
それがようやく治まると、足りなくなった酸素を肺が激しく求めた。
同時に鼻を摘みたくなるほどの激臭が襲ってくる。
僕はその場に尻餅を突いてへたり込んだ。
「…こんな…げんじ…つ。あるはず…あるはずが…ない」
空を見上げた。
そいつは他人事のように、先ほどまでと変わらない光を放っていた。
僕はそいつを睨みつける。
「ふざ…けるな…!ふざける…なぁーっ!!」
声が枯れ果てようと知った事じゃない。
僕は何度も何度も、ただひたすらに叫び続けた。




