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after1






暗い。どこまでも、果てしなく暗い。

それはどこまで続き、どこに光があるのか。

目蓋の外には間違いなく光が溢れているはずだ。

瞑っているはずの目蓋の裏側には、それを示す微かな熱を感じている。

けれど悔しいかな、その扉を開く事が出来ない。


(いた…い…)


自らの意思で目蓋を開く事が不可能なのだ。

睫毛が貼り付き、糊で接着したかのようにびっちりとくっついてしまっている。

どうやらこれは目ヤニが固まっているようだった。


(何か…変…だ)


動かない体。

開けられない目蓋。

けれど確かめたい。

だが目を開ける事も、たった一本の指を動かす事も出来ないでいた。

鼻の奥がひりひりとした刺激を帯び、喉がカラカラに渇いていて声も上げられない。

全ての力が抜けてしまったかのように身じろぎ一つ出来ない。


(僕の体…こんな…だった…のかな。喉が…渇いたな…)


どれだけの時間そうしていたのだろうか。

時間の感覚はまるで掴めない。

おぼろげだった意識だけは少しはっきりとしてきた。

けれど今、自分が置かれている状況だけが飲み込めない。

やがてようやく指に力を籠める事が叶った。

序々にではあるが動く。


(く…)


全身に脳からの信号が行き届き、少しずつ体の機能が正常へと戻りつつあった。

やっとの思いで利き腕の右腕を動かす事が出来た。

僕はその手で目を擦る。

汚れているのか近づけた手は土や木の臭いがした。

鼻の機能も戻ってきたのか、他にも色んな臭いが漂っているのに気付く。


(焦げた臭いと…何だこれ…凄く臭い…。変な臭い…だ)


鼻が曲がりそうな程の激臭。

寝ながらだけど、長いことそれを嗅いでいたからおかしくなっていたのだろう。

それを我慢し僕は目を力いっぱい擦り、へばりついた目ヤニを剥がし取った。

これで…ようやく目が開けられる。

声は渇ききっていて出す事は出来なかった。

けれど問題ない。

今は何が起こったか…それを自分自身の目で確かめたい。


ビリッという音が聞こえた気がした。

それと同時に射し込む光。

それは待ち望んでいたものだ。


(…ひ…かり…だ)


『まばゆい』とはこういう言葉なのだろうか。

闇に慣れすぎていたためか、光を目に取り込んだ瞬間眩んだ。

目を閉じても眼球に光の黒点が残る。


(…っ!…けど…どうして家の中にいた…のに、天井から光…が?)


再び目を開ける。

ようやく目も本来の機能を果たすようになってきた。

ゆっくりと景色が見えてくる。


(…えっ!?)


僕は目を疑った。

僕は寝そべっている。

だが見上げた天井には大きな穴が開き、幾つもの木の柱や壁が折り重なって倒れていた。

首を動かす。

辺りは同じように瓦礫に塗れていた。


(なん…だこれ…。どうなってるん…だ)


倒壊。

僕の頭にはその二文字が浮かぶ。

これは…僕の家が倒壊した…のか?

血の気が引いたのを自分の耳で聞いたような気がした。


(こんな…馬鹿な!じゃあ…みんなは…みんなは!)


僕は力を振り絞って体を起こす。

僕自身はなんとか無事だった。

打ち身と打撲・擦り傷程度で動くにはなんとか問題はない。

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