四日目-34
僕らは場所を公園へと移した。
最初に唯と出会った場所。
そして唯はこの公園が大好きだった。
僕らは芝生の上で座り、他愛無い話に花を咲かせた。
陽は傾き僕らの影を長くしていたけど、話す事はいくらでも出てきた。
大好きな食べ物、大好きな遊び、大好きなもの。
唯は子供のように目を輝かせ楽しげに語ってくれた。
本来なら彼女の時は小学六年生の頃から止まったままだ。
大人びて話すことが出来ているのは家庭の事情によるもので、身に付かせざるを得なかったんだろう。
そうでなければ身勝手な大人たちに、理不尽な暴力や強要を強いられていたのだから。
話を聞いて貰える事が、彼女にとっては何よりも嬉しくてたまらない事。
元から内気な性格じゃなく、環境が彼女をそうさせていたんだろう。
僕はこんなにも話が好きだったという事実に、また一つ彼女の魅力を知った。
幾らでも聞こう。
彼女が満足するまで。
語り終えたのはもう陽が沈んだ後だった。
辺りはもう暗く、僕らは間近でお互いの顔を見るのにも苦労するほど。
「浩人…大丈夫?」
「え?ああ…うん」
「なんだか顔色…悪い」
「うん。疲れたってわけじゃないけど…」
唯はこの暗がりでも僕の顔色をしっかりと見ていたようだ。
本音を言えばさっきから体が熱いと感じている。
「喉が渇いているみたい。喋りすぎたのかな?ははは」
「…ごめんね。私…浩人と話をするのが楽しくて…」
「いいんだよ。僕も唯と話すの、凄く楽しかったし」
「そう…ありがとう」
ああは言ったものの、これも変調の一部なんだろうな…。
体のけだるさも拍車をかけるように酷くなっていた。
現実の体は…どうなっているんだろう。
さすがにもうまずいレベルなのかもしれない。
「浩人」
唯は僕の名前を呼ぶと立ち上がって手を差し出した。
「ん?何?」
「…帰ろう。私…浩人に居なくなって欲しく…ない」
「唯…」
「体…調子悪いんでしょ?浩人は何も言わないから…私の事ばかり気にしてくれて…」
「違う、そんなんじゃないから。唯の方こそ無理…してないかい?」
唯はちゃんと見抜いていた。
僕の体の事も。
「私は平気。けど…浩人の方が心配…だよ」
「ありがとう」
僕は唯の手を取り、同じように立ち上がった。
「…元の世界に帰れば…また逢える…よね?」
「もちろんさ」
「絶対に…逢えるよね?」
「必ずだ!」
唯は不安そうに僕の握る手を強く握り返してきた。
それに応えるかのように、僕も力をこめる。
「私…帰るよ…。浩人が待っていてくれる…元の世界に」
「唯。いいんだね?」
「うん。話は帰ればこれからもいっぱい…いっぱい出来る」
唯は覚悟を決めてくれたようだ。
なら、後は還るだけだ。
僕は唯の目を見据えた。
「あの空間はどこにでもある。どこから飛び込もうか…」
「浩人…私が…決めていい?」




