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四日目-32


それから僕らは話を進めた。

唯は四年前にこの世界に舞い降りた。

当然そこは一人ぼっちの場所。

まだ小学生だった彼女は、何をどうしたらいいか分からずに、ずっと一人でこの町をさ迷っていたらしい。

最初は僕らが食べていたコンビニなどの食べ物を食べていたけど、いつしか食べなくても大丈夫だという事を知ったらしい。

事実あのバーベキューの時以外、唯が食べ物を口にした場面を見た事がなかったのはそういう事だったんだ。

現実を逃避していた彼女にとって、無意識で生み出されたこの世界の理屈など、自分でもまるで把握していない様子だった。

空き地の件なども本当に驚いただけだったようだ。

後は僕らがこの場所に呼ばれた理由。

それも唯にとってはただイレギュラーな事であり、真相なんかは分かる事はなかった。

彼女がここに僕らを呼んだのではないし、何より考えてみれば出会った事のないまみこちゃんや水仙寺さんとの共通点もまるでない。

…これはただの偶然だったのだろうか?

彼女たちは唯が創った空想の人物だったのか、今でもそれは不明だ。

それは…元の世界に戻る事が出来れば全てがはっきりとするはず。


僕はこの世界の事を全て鮮明に話すと、なんとか理解してくれたようだった。

けれど事実を知ったはずなのにこの町には何の変化もなかった。

これは唯自身が知ったところで彼女自身どうする事も出来ないと言ったものと解釈出来る。

ではどうすれば還る事が叶うのか。


「浩人、ここが私の想像の中の世界なら…どうすれば目覚める事が出来るの?」


「それは多分、物凄く簡単な事だったんだ」


僕はゆっくりとまた口を開いた。


「僕らはこの町に意識体が縛り付けられている。それは唯が無意識で縛っているのでも、僕ら自身が望んでいるのでもない」


「…うん、私は最初はみんなが現れたとき、何でって心の中で否定した事はある。だから…私がそういう事を望んでいたとしたら…みんなとっくに消えてるって事…だよね?」


「そうだね。唯がそう望んでいても僕らは還れなかった。だから自分から還るしかないんだよ」


「自分…から?」


「そう。先輩が落ちていったあの『闇の空間』。あそこが…僕らとこの世界との意識を切り離すための場所」


先輩が消えてしまったあの奈落の底。

最初見たときはあそこは落ちたら死んでしまうと僕らは思った。

けどこの世界での死って何だ?

山下さんもまみこちゃんも、この世界で外傷を負って消えたわけじゃない。

あれは現実で何か体に異変が起こったから意識が消えた…いや、切り離されたんだ。

多分この世界で僕らが傷を追ったとしても直接的に死んでしまう事はない。

痛みは感じたとしても肉体はここにはないのだから。

余程の精神的ダメージを追ったり精神体が激しく傷つけば、ショック死とかもあるだけに考えられない話じゃないけど、今の僕らにはもう無縁の話だ。

じゃああの穴に落ちたら?

僕らはこの『町』がある事によって、意識を保てている。

町に居続ける限り、願っても還る事が叶わないのなら自ら出て行けばいい。

つまり、あの空間こそがこの世界から還るための道。

記憶で構成されたこの町は、なまじ景色が存在するために僕らを人の形として形成してしまう。

けどあの闇の空間には一切そんなものがない。

情報と呼べるものがなければ、僕らの体は形体を維持出来なくなるはずだ。

あそこに飛び込めば…僕らは意識を失い、そして体を失うだろう。

行き場を失った意識はどこへ向かうのか?

僕らは願っている。元の世界に還る事を。

だったらおのずと向かう先は決まっているはずだ。

山下さんやまみこちゃんが消えたのは、この世界で意識を保てなくなったから。

落ちた先輩。

きっと今頃もう元の世界に居るはず…。


「あの真っ黒な場所…」


「唯も知っていたんだね?」


「…うん、黙ってて…ごめんなさい。私も気味が悪くて…もう近づかないようにしてたから」


「いいよ、あんなもの普通はそう思うのが当然だし」


「だから知らない場所には行かないようにしてた。何だか怖くて…」


唯も僕らと同じでずっと近づかないようにしていたんだ。

話に出す事を躊躇うのもしょうがないと思えた。

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