四日目-31
「こんな僕なんかでも信じてくれているんだ。君は…心底から人を憎むなんて事は出来ない人間だよ」
「私…は…」
「僕は…唯とずっと一緒に居たい。この気持ちは同情とかそういうものじゃないんだ。…多分純粋に君の事が好きだから」
唯は僕にだけ特別な好意をくれていた。
それがどんな感情によるものかなんてまだ分からないけど、その好意は素直に嬉しかった。
不器用で人が怖くて、他人との接し方すら満足に分からないくらい世間知らず。
放っても置けない。
それに唯自身が語ってくれた自分の過去の話。
あれを訊いたとき…僕はこの子の傍にずっと居たいと願ってしまった。
悲しませたくない、一人ぼっちにさせたくない。
これは同情から生まれた気持ちなのかもしれないけど、一緒に居たいって気持ちに嘘はない。
これが『恋』なのかは分からない。
ただそれでも今まで感じたことのない感情なんだ。
目の前に居る一人の女の子。
その子を守りたい。
一緒に居たい。
「現実の世界はここにはない楽しい事だってたくさんある。辛いことばかりじゃないんだ。君が僕の事を一度でも信じてくれたように、もう一度だけ…勇気を振り絞って欲しい」
「勇…気」
「今までは君を必要じゃないって言う人間ばかりだったかもしれないけど、ここに一人でも君を必要としている人間が居るんだ。…だからもう自分を貶めるような事は言わないで」
僕は唯の手を取った。
温かい。
けどこの温もりはここでは僕の記憶で模られたものだ。
だからこそ、本物のこの温かさを感じたい。
「僕たちはまだ子供だ。だから…一緒に強くなろう。一人では無理かもしれないけど、二人でならきっと…大丈夫!」
「…うん…うん!」
唯は力強く頷いてくれた。
僕はただそれだけで凄く嬉しかった。
後は…元の世界に戻るだけだ。
僕は唯の手を握ったまま隣合わせで座った。
「唯、君は目が覚めたとき病院に居たと言ったね?それは山下さんが居たっていうあの総合病院?」
「…うん。多分そうだと思う」
「そっか、なら君は今でもそこで眠っているはずだ」
僕たちの体はこの世界で目覚めた場所。すなわちそこに現実の肉体がある。
元の世界に戻ったときにはそこへ行けば本当の唯に会えるという事だ。




