四日目-30
「今の唯には仮に元のように人が溢れた世界に戻っても辛いだけかもしれない。それでもね、みんなでやったバーベキューを君は楽しいと言ってくれた。その気持ちだって僕は嘘じゃないって思ってる」
「他の人は浩人のように…優しくなんてない!だから…私には必要ない」
「…それは先輩も…先輩にも言える事なのかい?」
僕は敢えて口に出さなかった単語を出す。
「先輩…あの人も一緒だよ!…私を要らないからって…消そうとしたんだ…。結局自分勝手で…あんな人…あんな人!!」
「唯…身勝手でその先輩を消したのも君だよ…。確かに先輩のした事は赦されない事かもしれない。でも何故あんな真似をしたのか、それをまだ先輩に聞いてない。…それは思わないかい?」
「知らない!訊きたくなんてない!みんな…自分勝手で私の事はみんな必要のない邪魔者だって思ってるの!先輩は私を消そうとしたから…罰が下ったんだ!」
「何が正しくて間違っているのか。そんなもの誰にも分からないよ。ただ僕らには言葉がある。お互いに分かり合うために必要なものが備わっているんだ」
「知らないよ!そうだったとしても…先輩はもう消えちゃったんだよ!!死んじゃったんだよ!!」
「…今なら分かる。先輩はまだ死んでなんていない。きっと…まだ生きている。消えてなんてない」
僕には確証が持てた。
先輩は…きっと元の世界に還ったんだ。
還るための『道』を辿って。
「そんな…嘘だよ…。先輩は…消えた」
「生きてる。僕は信じているだけじゃなくて確証があるんだ。…先輩は元の世界に戻ったんだよ」
「も…との世界」
「時には喧嘩もするし、人を信じられなくなる時だってある。僕だってそうしないように堪えていただけで、疑うって事を放棄してたわけじゃない。ただ相手の思惑ってのはその本人に訊かない限り…永遠に理解なんて出来ないものなんだよ」
「じゃあ何で浩人はあんな事した先輩を…信じられるの!?あんな『人』を信じられるの!?今の浩人が言ってる事…嘘にしか聞こえないよ!やっぱり私の事なんて…浩人も嫌いなんだ!消えて欲しいって思ってるんだ!」
「信じてるからだよ。唯…君の事も」
「え…」
「そう、僕は唯の事を今でも信じてるから。先輩の事だって話せばきっと…お互いに分かり合う事が出来るって…。唯なら大丈夫だって…」
今の唯に僕の言っている事が通用するのかは分からない。
けど僕は僕なりに下手でも自分の想いをこうして伝えることしか出来ないんだ。
「僕は…唯の事が好きだ」
「ひ…ろと?」
「人全てを拒絶していながら…君は僕だけにはちゃんと接してくれた。話もしてくれた。そんな唯が僕を信じてくれる…だから僕だって唯を信じていられる」
唯自身がどういった感情で僕に接してくれているのか真意なんて分からない。
けれど僕は自分の気持ちを不器用だけどしっかりと口にした。




