四日目-28
「失礼ですがこの子の体。無数の痣と傷の跡が多く見受けられました。お金がなく満足な食べ物も与えてなかったのは、この痩せ細った体を見れば分かります。ただ、この体に刻まれた傷の跡…警察にでも知られればどうなる事でしょうね」
「…医者なのに脅すつもり?私じゃない!それは逃げたあの人が…」
「私の想像では図りかねます。脅しているつもりもこれ以上の追求もしません。ただ一人の医師として言わせて貰えば、あなたの言動は人として目に余るものがあります」
「何でよ…何で私ばかりがこんな目に…っ」
おばさんは凄く悔しそうな声を上げていた。
だから何?辛かったのはおばさんだけじゃないよ?
私だって痛かった。辛かった。自由が欲しかった。…だから、消えようと思った。
「…お母さん。もう一度良く考えて御覧なさい。人の命の尊さと言うものを。お金と命、天秤に掛けるならどちらが重いのかを」
「その天秤の上には私は乗っていないのですね」
「金銭面は私のほうでもなんとかなるように出来るだけ配慮してみます。…本当に大切なものは何か。あなた自身、一人になってもう一度よく考えてみてください」
お医者さんはそう言って出ていったみたいだった。
目を開けることが出来ない私は今おばさんがどんな顔をしているのか分からない。
けど、正直もう放っておいて欲しかった。
別に助けて欲しくなんてない。
元気になってもまた閉じ込められた生活が始まるだけ。
私はどこへ行っても邪魔者。
家でも学校でも居場所なんてない。
「…死ね。あんたなんて…死ねば良かったのよ。そうなっていれば…私も救われたのに」
部屋を出て行くとき、おばさんはそう言い残していった。
…そんなこと、言われなくたって分かってるよ。
部屋から人の気配がなくなっても、目を開く事は出来なかった。
体は自分の意思とは別に動かすことは出来ない。
今自分が起きているのか寝ているのか、そんな事すら分からない状態だった。
私自身が消える事が出来ないのなら…みんなが消えてくれればいいのに。
そう願った私は意識が遠のいていった。




