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一日目-6


「腹も減ってきたし、飯でも食えばもっと元気になるだろう。ってことで捜索する前に腹ごしらえと行こう」


「そうですね、言われてみれば僕ももう腹ペコだ…。でもどこへ行けば」


「その点は心配無用だ。俺はコンビニにも寄ったんだが、手付かずの弁当やおにぎりなんかがたくさん残ってた。、あそこに行けば好きなだけ食える!」


「コンビニ弁当…いいですね!って…僕お金持ってないし」


先輩は僕の言葉を聞くと、呆れたように頭を全力で下げた。


「浩人ぉ…今はもう無人なんだぞ。金なんか必要ない。好きなだけ勝手に持ってきて食べればいいんだ」


「それって…!」


「誰もいない、それで食料だってこの先どうなるかも分からない状況だ。今更そんな体裁は必要ないだろ。食わなきゃ死んじまうんだし、もしそれでも善意が痛むならみんなが戻ってきたら後で払えばいい」


「う…そうですね、この際取り繕っても駄目…なんですよね」


「ああ。金を払いたいといっても誰に払えばいいって話にもなるしな、気にしないほうがいい」


先輩がまさかそんな事を言い出すなんて思わなかったから躊躇ったけど、確かに言うとおりだ。

こんな境遇なのにモラルだとか体裁とか僕が間違ってたのかもしれない。

そりゃ少しは気が引けるけど、どっちみちこのまま人が戻らないのなら捨ててあるのと同じなんだよな…。

腐らせて食べられなくなるくらいなら、食ってやろうじゃないか。

料理するにも材料がなきゃどうしようもないし、正義だとか悪だとか考えるだけ無駄だったのかもしれない。


「あんまり深く考えるなよ。気楽に行こうぜ」


「分かってます。さあ行きましょう!」


元気付けてくれる先輩に心配かけまいとそう答えた。

僕らはすぐに近くにあるコンビニへ向かうことにした。














もはや当たり前となった二十四時間営業のコンビニ。

しかし当然の事ながら店内には誰もいなかった。

にも関わらず店内は空調が効いていて物凄く涼しい。

棚にズラリと並んだ商品、これが今では自由に好きなだけ持って行っていい状態なのだ。

けれどお腹が空いている僕らは普通の物には目もくれず、弁当が陳列してあるコーナーへと向かう。

そこにはまるで入荷したばかりのように、たくさんの食べ物が並んでいた。

まるでずっと手付かずだったかのように。

とても二人で食べきれる量ではなかった。数日かかっても多分無理だろうと思う。

僕らは互いに食べたい弁当を手に取り、レジ裏にあるレンジで温めた。

他に飲み物やお菓子なども袋に詰めて一旦店を出る。

外にある駐車場の縁石を椅子代わりにして弁当を食べた。

やっぱり最初は罪悪感があったけれど、空腹が満たされて行くにつれてそんな気はどこかへ失せていた。

とりあえず食事の問題は解決したようにも見えたけど、これからは缶詰とかそういうものしか食べられないのかもしれない。

コンビニ弁当が味わえるのも賞味期限がある二日間かそのくらいだろう。

先輩はスーパーに行けばレトルトなんかも大量にあるから心配はないと言っていたけど、確かに今の世の中便利だと思った。

当面食料に関しては問題ない、と言ったところだろう。

生活用品なんかもどこでも手に入るし、電気や水道が普通に使えるのも有り難いことだった。

お風呂だって使えるはずだし、衣服だってちゃんと着替えられるし洗濯も普通に出来る。

仮にこの状況が長期化したって大丈夫ということだ。

それはそれで嫌だけれど、生きていくために必要なものだけは揃っているし文句は言えなかった。


弁当を平らげて僕らはアイスを食べながら食休み。

この後本格的に人捜しに向かう予定である。


「それで具体的にどうやって捜していくんですか?」


僕はアイスの包みを丸めながら先輩に尋ねる。

ピッチャーのように構えてゴミ箱に放るけどノーコンな僕は当然狙いを外す。

そのままでも文句は誰にも言われないだろうけど、やっぱり気になるので拾ってちゃんと捨てた。


「二人で捜すってのも効率が悪いよな。俺は二手に分かれて人が居そうな場所を捜して行こうと思うんだが」


「二手…ですか。やっぱりそっちのほうがいいのかな」


「一人じゃ不安って気持ちも分かるけど、俺たちみたいな境遇の人が他に居るのだとしたら早く合流したほうがいいからな」


「ですね…。不安なのは僕たち以上でしょうし」


「うん、この際そこは我慢して捜索優先にしよう」


「分かりました。けど合流地点を決めておいたほうがいいですよね?携帯が使えないから連絡は出来ないし、どこがいいだろう」


「そうだな…学校でもいいけど、普通に集まるにしてはちょいときついな。あの坂道もあるし」


「確かに。ならこのコンビニでいいんじゃないでしょうか?」


「そうだな。そのほうが手っ取り早い。晩飯もすぐに済ませられるし一石二鳥だ」


僕たちはこのコンビニを合流地点に決めた。

後はどうやって捜していくかを決めないといけない。


「俺は西地区を捜してみようと思ってる。浩人は東側を頼めるか?」


「東ですか…了解です」


「捜すポイントとしては人が多く集まりそうな場所がいいかもしれないな。そういった施設の周囲だけを重点的に捜してみよう」


「例えば僕の東側なら商店街とか駅前とかですね?」


「そういうことだな。一つ一つ民家なんて覘いていてもキリがない。後は相手に気付いて貰えるようなものがあればいいんだけど…」


先輩は腕を組んで考え始める。

人を気付かせようとするならやっぱり音が一番だとは思うけど、声を上げてばかりでも埒が明かないだろう。

けど僕は咄嗟に気付いた。


「先輩、音楽とかはどうでしょう?プレイヤーでもいい、そういうのを持って流したまま捜すんです」


「音楽プレイヤーか、それはいいかもな!これだけ静かなら相手が気付けば向こうからやってくるかもしれない」


「本当は発声器なんかがあればいいでしょうけど、捜し回りながら声を上げるのも大変ですからね」


「体力的にもそれは確かに辛い。よし、浩人の意見に俺は賛成だし、音はそれで行こう」


「ただあんまり大音量でも相手の声を聞き逃したりするかもしれないし、注意は必要ですね」


「それは言えてるな、分かった注意しとくよ。それと…だ」


先輩は言いながら腰を上げた。


「歩いて捜すってのも正直骨が折れるだろうし、名案がある。ちょっと付いて来てくれ」


「ん?分かりました」


僕は言われるがまま先輩の後に付いて行く。

今から分かれて捜索しに行くと言うのにどこへ向かうんだろう。

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