表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/112

四日目-18





「せん…ぱい…」


僕は放心状態となってその場から動く事が出来ないでいた。

これはどういう…事だ?

人一人分、そこだけ削り取られたようにぽっかり空いた、厳重だった『はず』のフェンス。

先輩はその先に落ちていった。崖下に…。

見下ろす『そこ』は雑木林になっている。

ここから見える高いはずの木々は小さかった。

それはとても…とても。


「かっ…う…うわ…ぁぁ…はぁ」


背後から唯の咽び泣く声が聴こえる。

それでようやく僕は振り返る事が出来た。

唯は地べたに座り込み、咳を交えながらアスファルトにたくさんの涙を染みさせている。


「唯…」


「げほっ…げほっ…!」


僕が見えていないと思ってしまうくらい、唯は夢中で咳を繰り返している。

だが…唯は無事だ。

そうだよ、今は…先輩を。


「…唯、ごめん。すぐに戻るから」


声は聴こえていないのかもしれない。

けど僕は唯一人を残し、坂道を下って行った。











崖下に広がる雑木林。

僕はそこに足を踏み入れる。

先輩は…きっと生きてる。無事なはずだ。

絶望とも呼べる時間。

茂みを掻き分け奥へと進んで行く。

そこは昼間だというのに凄まじく薄暗かった。

まるで暗幕でも掛けられているかのよう。


「……………」


僕は足を止めた。

いや、止めざるを得なかった。

それはあの時訪れた…民家と、同じだったから。


「…そん…な…」


目の前に広がる光景。

そこには無限とも言える『闇』だけが支配した空間だった。

何も無い。

無。

暗いはずだ。

あんなものが、ここにもあったのだから。

当然だ。

こんな場所に、僕は来たことがないのだから――。


「…こんな…事って」


僕は力が抜けたように膝から崩れ落ちた。

もう何も見えない。進めない。知る事も出来ない。

彼は…呑まれてしまったのだ。

この『無』が『夢』であってくれ、と、僕は願った。

けれど、無常にもその無は闇となって僕の意識をゆっくりと蝕んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ