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四日目-15


僕たちはもう自力で目を覚ますことが出来ない状態なのだろうとも考えてしまう。

完全に意識はこの世界だけに存在し、孤立している。

向こうの自分に意識は宿ってなんかいない。

現実世界の自分に意識を戻せるのなら、とっくに帰れているのだから世話はない。

何故なら僕らはとうの昔にそれを『願っている』のだから。


そこで違和感が芽生えた。

なんで僕らはここにいる…?それは自分の意思じゃないのに。


「まさか僕は…とんでもない誤解をしていたんじゃないのか…」


僕らはこの『町』という偽物の空間に縛り付けられている。

けれど居なくなった人たちはどんな形であれ、帰還しているじゃないか!

みんなこの世界から現実に帰りたいと望んで消えたんじゃない。

それは意図していない理由によるものだ。

縛り付けられたままだとしたら、遺体は消えずに残って当たり前なんだ。

僕らの記憶に姿は残っているのだから。

なのにみんな身体は消えた。

この世界から。


「これが意味する事って…」


僕は俯かせていた顔を上げた。

どのくらいの時間考えを廻らせていたのだろうか?

星の自転が止まった空。

だが太陽の位置はかなり上空へと進んでいた。

あの太陽が作り物だとしても、時間の概念が正しく働いているからかちゃんと浮き沈みを繰り返す。


「少なくとも唯が僕らを縛り付けてこの世界に留めている訳じゃあない。なら帰る為のトリガーは…」


僕が立ち上がろうとしたその時――


「…め…て!」


グラウンドの方で声がした。

屋上からでさえはっきりと聴こえる大きな声。


「何だ?」


慌ててフェンス際に駆け寄り、下を見下ろしてみた。


「あれは先輩と…唯!?」


先輩が唯の肩を掴み、彼女はそれに激しく抵抗していた。

何やら言い争いをしているようにも見える。


「先輩…何を…。まさか!」


僕はすぐに駆け出す。


(先輩は…唯を問い詰めているのか!?そんな乱暴なやり方は…駄目だ!)


転がるように僕は階段を駆け下りる。

すぐに止めさせなければ!

あの気弱な唯にあんなやり方をしてはいけない!

そもそも先輩らしくない…!


「唯…先輩!」


リノリウムの床がキュッと音を立てて上履きのゴムを噛む。

下駄箱まで到達すると、そこに見えたのは走り去る唯と追いかける先輩の背中だった。


「くそっ…!」


靴を履き替えている時間もない。

二人の姿はすでに校門から消えていた。


「どうしたって言うんだ先輩…何故あんな真似を!」


僕は上履きのまますぐに後を追った。

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